一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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カイワレ大根の自由研究です

質問者:   中学生   ジェラ
登録番号4202   登録日:2018-08-16
カイワレ大根を水溶き絵の具を使って育てる実験をしています。

100mlの水に赤、青、緑、黒の絵の具を水にそれぞれ5gずつ溶かし、1cmほど重ねたクッキングペーパーに浸して、その上から種を蒔きました。そして、段ボール箱を被せて日光に当たらないようにしました。

4日で芽は出てきたのですが、そこから5日経過して
赤と青は1~2㎝
緑は2~3㎝
黒は2~3㎝、1本だけ5㎝程度に成長する
という違いが出てきました。

茎の中を確認してみたのですが、色で染まるとおもっていたはずの道管が全く染まっていませんでした。

水が乾いた時には、水溶き絵の具ではなく、普通の水で湿らすようにしました。

なぜこのような結果になるのか理由を教えてほしいです。

ちなみに、普通の水で育てた場合は、普通に(6~7㎝程度)育ちました。
ジェラさん

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。カイワレダイコンはよく自由研究の実験に使われますね。ジェラさんの研究はもちろん何か目的があって、こういう実験を計画したのでしょうね。質問内容からは残念ながらその目的がはっきりわかりません。私は二つの目的を想像しました。一つは「水溶き絵の具の色素がカイワレの発芽と成長にどんな影響を及ぼすか」を調べる。二つ目は「水溶き絵の具の色素はカイワリの芽生えにどのように吸収されるか。色素の違いにより染まり方の違いがあるか」ということです。あるいは全然別の目的なのかな?

他にもわからないことがありますので、残念ながら質問に書いてあることだけでは、的確な回答をすることはできません。
例えば、1)一つの色に何個種子を蒔いたか。質問内容から、一個ではなく複数個だったことがわかります。それは大変いいことです。ふつうこのような生物の実験をするときは、なるべく材料の数を多くして、観察される現象や効果が、例えば赤の絵の具を使った場合、それが赤で育てたほとんどの個体に共通したものかどうかを確かめることが必要です。使う個体の数が少ないと、それらはたまたま例外的な個体であるかも知れません。2)使った種子はサイズ、重さのなどの点で均一だったか。種子が発芽して芽生えになって成長するとき、初めの成長は種子に蓄えられていた栄養分(カイワレダイコンの場合は一対の子葉に貯蔵されています。)をもとに成長が進みます。だから、貧弱な種子よりも立派な種子から発芽した芽生えの方が、よく成長します。なるべく揃ったサイズの種子を使うことが望ましいです。3)種子がどういう状態になった時を発芽したとみなしたか(発芽の基準)。一般に発芽は種子から根(幼根という)が種皮を突き破って出てきた時を言いますが、観察するときは一応、例えば0.5mmとか1mmとか基準を決めて判断する方がいいでしょう。4)絵の具に蒔いた種子は全部の種子が揃って同じ時期に発芽したか。質問中では「4日で芽が出てきた」とありますが、4日でほぼ全部の種子の発芽が始まったのか、それとも、早いものも遅いものもあって、4日に全部発芽し終わったということですか。発芽が不揃いだと、芽生えの成長は不揃いになります。また、絵の具の色の違いによって発芽の時期(蒔いてからの時間)に違いはなかったか。5)光が当たらないようにした理由は何ですか。もやしにした方が、植物が吸った色がよくわかるからと思ったのですか。6)質問の中の数字は多分茎(胚軸といいます)の長さだろうと思います。しかし、例えば、「黒の2〜3cm」、一本だけ5cm程度に」というのはどういうことかわかりません。おそらく、茎の長さは2から3cmで、一本だけ飛び抜けて5cmも伸びたということでしょう。しかし、もし仮に10本芽生えがあって、2cmが2本、2.8cmが2本、3cmが5本、5cmが1本だったと場合と、2cmが7本、2.2cmが1本、3cmが1本、5cmが1本だった場合を考えてみましょう。どちらの方が全体によく伸びていると推定しますか。複数の何かを計量して比較するときは、平均値というものを計算して比較します。前者の平均値は(2x2+2.8x2+3x5+5)÷10=2.96、後者は2.42となります。(平均値を出すときは、その計算のもととなる数値がどれだけバラツイテいるかということも問題になりますが、ここではそのことには触れません。)実験結果を数値で表すときは工夫しましょう。7)使った水彩絵の具のそれぞれの色の顔料(色素)について調べましたか。絵の具の色を出すためにいろいろな材料が使われています。岩石/鉱石を粉にしたもの、天然の生物由来の色素、合成の化合物などです。(「水彩絵の具の顔料」という語句でネットで検索してください)。多くの顔料には毒性があります。植物にとっても成長が阻害されるものも含まれています。8)「普通の水で育てたものは普通に(7〜8cm)育った」というのはどういう意味ですか。普通の水というのはあいまいです。水道水ならばそのように書いたほうがいいです。絵の具も水道水で溶いたのでしょう?また、普通に育つというのは何が普通なのか不明です。しかし、絵の具を溶いた溶液と、何も入れない水道水とを組み合わせて実験したのはとてもいいことです。何かの影響を見たい場合、それがあるものとないものとをセットにして比較することは実験の基本です。このように比較するものを「対照」といいます。9)道管が色素で染まっていなかったということですが、どのように調べたのですか。本コーナーの過去の質問をみてください。(登録番号3189).カイワレに食紅を吸わせて、染まらないことについての質問です。豆苗を使った実験ですが登録番号2723も参考にしてください。また、もし研究の目的が最初の(2)に当たるのでしたら、食紅など毒性のない水溶性の色素を使う方がいいでしょう。

残念ながらなぜこんな結果になったのかはわかりません。上に書いたことから想像すると、絵の具水は種子の発芽/芽生えの成長を阻害する物資を含んでいるのかもしれません。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-08-22