質問者:
中学生
とび馬
登録番号4211
登録日:2018-08-25
イネの開花ですが、一般的に穂の上から下へ順番にイネの開花について
咲いていくことを知りました。
なぜ花は一度に咲かず、順番に咲くのですか。
理由を知りたいです。
(田んぼをやっている親戚に聞いてみたのですが、詳しいことは分からないと言われてしまいました)
よろしくお願いします。
とび馬 さま
本コーナをご利用頂き有り難うございます。
ご質問は、イネの花を専門に研究されている農業・食品産業技術総合研究機構の吉田均先生にご回答頂きました。
【吉田先生のご回答】
イネの開花のパターンについてご質問いただき、ありがとうございました。たしかにイネの穂の花はいっせいには開花せず、一週間くらいかけて開花が完了しますよね。生命現象の仕組みの理解につながる、とても良い質問だと思います。
イネは日の長さや温度などを感知して穂を作り始めますが、1ヵ月ほどかけて穂を完成させ、開花に至ります。品種にもよりますが、最終的には一つの穂に100個くらいの花が作られることになります。イネの花が上から順番に咲いていくことの原因は、この穂を作っていく過程に隠されています。
イネでは、まず茎や葉のもととなる「生長点」と呼ばれる組織が「穂の生長点」へと性質を変えます。「昨日までは子供だったけど、これからは将来のこととか考えて、大人にならなくちゃ」という感じですね。
生長点は、初めは1mm未満のとても小さな組織ですが、これをもとに穂が形成され、徐々に上に伸びていきます。この時、まずイネの穂の枝分かれが形成され、それぞれの枝の上に花ができていくのですが、穂の枝分かれは上から順番に作られ、最終的には10本くらいの枝分かれが形成されます。一番上の枝分かれと一番下の枝分かれとでは、4〜5日ほどの差があるでしょうか。さらに枝分かれの中でも、一番先端の花がまず形成され、下位の花とは数日ほどの生長の差があります。
こうして考えてみると、一つの穂の中の花はきょうだいのようなもので、上位の花はお兄さん、お姉さん、下位の花は妹や弟、生長には1週間ほどの差があるということになるわけです。このため、一つの穂の中でも、まずは上位の年上の花が開花し、その後、数日かけて、下位の年下の花が開花していくことになります。
一つの穂で考えてもこれくらいの差がありますので、1個体中の数本の穂や、別々の個体の間での差を考えると、田んぼ全体の花が開花し終わるまでには1週間以上の差ができていることと思います。
このようなしくみでイネの花は上から下へと順番に咲いていくわけですが、このしくみはイネにとってもメリットがあると考えられます。
今年(2018年)は本州以南ではとても暑く、北海道などでは逆に涼しい時期のある夏でしたが、このような極端な高温や低温の条件下ではイネの花粉が障害を受け、最終的に実る種子の数が減少してしまうことが知られています(冷害とか高温障害と呼ばれます)。イネの花粉は特定の生育時期に温度ストレスの影響を受けやすいのですが、上で述べたようにイネの花はいっせいに形成されるわけではないので、短期間の温度ストレスならば、遭遇しても穂の花が全滅することはなく、子孫を確保できるわけです。イネの生存戦略の一つと考えられるわけですね。
生き物のさまざまな現象にはそれぞれの理由があるので、今回のような疑問を持つのはとても大切なことだと思います。これからも、さまざまなハテナ?を大切にしていって下さい。
本コーナをご利用頂き有り難うございます。
ご質問は、イネの花を専門に研究されている農業・食品産業技術総合研究機構の吉田均先生にご回答頂きました。
【吉田先生のご回答】
イネの開花のパターンについてご質問いただき、ありがとうございました。たしかにイネの穂の花はいっせいには開花せず、一週間くらいかけて開花が完了しますよね。生命現象の仕組みの理解につながる、とても良い質問だと思います。
イネは日の長さや温度などを感知して穂を作り始めますが、1ヵ月ほどかけて穂を完成させ、開花に至ります。品種にもよりますが、最終的には一つの穂に100個くらいの花が作られることになります。イネの花が上から順番に咲いていくことの原因は、この穂を作っていく過程に隠されています。
イネでは、まず茎や葉のもととなる「生長点」と呼ばれる組織が「穂の生長点」へと性質を変えます。「昨日までは子供だったけど、これからは将来のこととか考えて、大人にならなくちゃ」という感じですね。
生長点は、初めは1mm未満のとても小さな組織ですが、これをもとに穂が形成され、徐々に上に伸びていきます。この時、まずイネの穂の枝分かれが形成され、それぞれの枝の上に花ができていくのですが、穂の枝分かれは上から順番に作られ、最終的には10本くらいの枝分かれが形成されます。一番上の枝分かれと一番下の枝分かれとでは、4〜5日ほどの差があるでしょうか。さらに枝分かれの中でも、一番先端の花がまず形成され、下位の花とは数日ほどの生長の差があります。
こうして考えてみると、一つの穂の中の花はきょうだいのようなもので、上位の花はお兄さん、お姉さん、下位の花は妹や弟、生長には1週間ほどの差があるということになるわけです。このため、一つの穂の中でも、まずは上位の年上の花が開花し、その後、数日かけて、下位の年下の花が開花していくことになります。
一つの穂で考えてもこれくらいの差がありますので、1個体中の数本の穂や、別々の個体の間での差を考えると、田んぼ全体の花が開花し終わるまでには1週間以上の差ができていることと思います。
このようなしくみでイネの花は上から下へと順番に咲いていくわけですが、このしくみはイネにとってもメリットがあると考えられます。
今年(2018年)は本州以南ではとても暑く、北海道などでは逆に涼しい時期のある夏でしたが、このような極端な高温や低温の条件下ではイネの花粉が障害を受け、最終的に実る種子の数が減少してしまうことが知られています(冷害とか高温障害と呼ばれます)。イネの花粉は特定の生育時期に温度ストレスの影響を受けやすいのですが、上で述べたようにイネの花はいっせいに形成されるわけではないので、短期間の温度ストレスならば、遭遇しても穂の花が全滅することはなく、子孫を確保できるわけです。イネの生存戦略の一つと考えられるわけですね。
生き物のさまざまな現象にはそれぞれの理由があるので、今回のような疑問を持つのはとても大切なことだと思います。これからも、さまざまなハテナ?を大切にしていって下さい。
吉田 均(農業・食品産業技術総合研究機構)
JSPP広報委員長
木下 哲
回答日:2018-08-27
木下 哲
回答日:2018-08-27