質問者:
中学生
のあ
登録番号4212
登録日:2018-08-26
こけは表面から水分を吸収するらしいですが、みんなのひろば
コケの水を吸う量について
水蒸気を吸う速さと水を吸うはやさはどちらのほうがはやいんでしょうか?
のあ様
みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
回答を、植物生態学が専門の中坪孝之博士(広島大学大学院生物圏科学研究科)にお願いしました。
【中坪先生のご回答】
ご質問にあるように、根から水分を吸収する維管束植物と異なり、多くのコケ植物は体表から水分を吸収します。例外もありますが、コケ類の葉は一層から数層の細胞でできており、クチクラ層も発達していないため、比較的簡単に水を吸うことができます。しかし、水を吸いやすいという性質と、水を失いやすいという性質は表裏一体の関係なので、周囲が乾燥すれば簡単に水を失ってしまいます。このような性質をもった植物が生きていくためには、常に湿った場所に生育することで乾燥を避ける生き方と、脱水に対する生理的耐性を発達させて乾燥に耐える生き方がありえますが、このどちらの生き方をしているかはコケの種類によって異なります。一般的に、湿った生育地の種類では、短期の乾燥でも生理的に大きなダメージを受けますが、乾燥しやすい生育地に生える種類は、長期の乾燥にも耐え、水が供給されるとふたたび呼吸や光合成などの生理活性を回復します。
さて、ご質問の内容を「一度乾燥したコケが生理活性を回復する程度の水分を吸収するまでの時間(速さ)」と解釈しますと、雨のような液体の水をかけた方が、すみやかに吸収すると言っていいでしょう。実際に、乾いたコケに水をかけてみると、縮れた葉が水を吸って動き出し、みるみるうちに葉が広がってきます。これに対し、空気中の水蒸気を吸収するためには、湿度が飽和に近い状態である必要があり、湿度が低くなると逆に水を失ってしまいます。さらに、コケ全体を充分に濡らせるだけの量の水分が供給されるためには、高い湿度の状態が長時間継続しなくてはなりません。自然界では、このような条件を満たす場所は少なく、いつも雲や霧のかかっている雲霧林とよばれる森林や、頻繁に霧が出る川の周辺などに限られます。
晴天が続くと開けた場所に生えるコケはカラカラに乾いてしまいます。そんなコケを見つけたら、霧吹きやコップの水をかけて、回復の様子を観察してみて下さい。コケ植物のたくましさと面白さを知ることができると思います。
みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
回答を、植物生態学が専門の中坪孝之博士(広島大学大学院生物圏科学研究科)にお願いしました。
【中坪先生のご回答】
ご質問にあるように、根から水分を吸収する維管束植物と異なり、多くのコケ植物は体表から水分を吸収します。例外もありますが、コケ類の葉は一層から数層の細胞でできており、クチクラ層も発達していないため、比較的簡単に水を吸うことができます。しかし、水を吸いやすいという性質と、水を失いやすいという性質は表裏一体の関係なので、周囲が乾燥すれば簡単に水を失ってしまいます。このような性質をもった植物が生きていくためには、常に湿った場所に生育することで乾燥を避ける生き方と、脱水に対する生理的耐性を発達させて乾燥に耐える生き方がありえますが、このどちらの生き方をしているかはコケの種類によって異なります。一般的に、湿った生育地の種類では、短期の乾燥でも生理的に大きなダメージを受けますが、乾燥しやすい生育地に生える種類は、長期の乾燥にも耐え、水が供給されるとふたたび呼吸や光合成などの生理活性を回復します。
さて、ご質問の内容を「一度乾燥したコケが生理活性を回復する程度の水分を吸収するまでの時間(速さ)」と解釈しますと、雨のような液体の水をかけた方が、すみやかに吸収すると言っていいでしょう。実際に、乾いたコケに水をかけてみると、縮れた葉が水を吸って動き出し、みるみるうちに葉が広がってきます。これに対し、空気中の水蒸気を吸収するためには、湿度が飽和に近い状態である必要があり、湿度が低くなると逆に水を失ってしまいます。さらに、コケ全体を充分に濡らせるだけの量の水分が供給されるためには、高い湿度の状態が長時間継続しなくてはなりません。自然界では、このような条件を満たす場所は少なく、いつも雲や霧のかかっている雲霧林とよばれる森林や、頻繁に霧が出る川の周辺などに限られます。
晴天が続くと開けた場所に生えるコケはカラカラに乾いてしまいます。そんなコケを見つけたら、霧吹きやコップの水をかけて、回復の様子を観察してみて下さい。コケ植物のたくましさと面白さを知ることができると思います。
中坪 孝之(広島大学大学院生物圏科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
櫻井 英博
回答日:2018-09-22
櫻井 英博
回答日:2018-09-22