質問者:
高校生
甲陵高校朝顔研究班
登録番号4228
登録日:2018-09-06
JAXAのプロジェクトに宇宙空間に朝顔の種子を保存したものを地球上で発芽、成長させた時に宇宙放射線の影響で変異が起きるのか研究するものがあります。その研究の中での疑問なのですが、宇宙で低線量の宇宙放射線を約9ヶ月浴びたもの、地上で高線量で短時間宇宙放射線の1種をあてたもの、普通の朝顔の種の3種類の発芽率を比較した時宇宙に持っていったものの発芽率がほかの2種に比べて低かったのですが、宇宙空間で無重力状態に置かれた種子を地球上で発芽させるとき発芽率に影響は出ますか?
みんなのひろば
植物の発芽と無重力について
甲陵高校朝顔研究班殿
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問への回答は、宇宙植物学で同様の研究に携わってこられた東北大学大学院生命科学研究科の高橋秀幸教授にお願いしました。JAXAプロジェクトの実験ではないとのことですが、参考にしてください。
【高橋先生のご回答】
植物への宇宙環境の影響を調べる場合、重力と宇宙放射線がもっとも重要と考えられますが、それらの複合効果や間接的な効果も念頭におく必要があると思います。また、乾燥種子に対する影響をみるのか、生体に対する影響をみるのかも重要と思います。
植物の宇宙実験を行う場合、種子発芽を含めて、調べようとする環境要因以外、例えば温度、水分、光、ガス環境などは同一にするように、研究者は工夫します。しかし、宇宙の無重力空間では、重力の違う環境を用意できても、それによって影響される培地中の水分や気流(風速)を同じようにコントロールすることは容易ではありません。地上と同じ重力下であれば水は下にたまりますが、無重力下では水が培地中に均一に分布し、水環境が違うことになります。また、無重力下では空気対流がなくなり、ガス交換が抑制されます。宇宙放射線も様々な線種からなりますし、最近は、宇宙放射線単独の影響だけでなく、無重力環境との複合効果も注目されています。したがって、地上で宇宙放射線環境を模擬することも容易ではありません。
さて、ご質問の種子発芽に対する重力影響ですが、これまでの宇宙実験の結果をみてみますと、種子発芽が地上重力下よりも宇宙無重力下で劣るという報告もありますが、発芽に無重力の影響はみられなかったという結果が様々な植物種で報告されています。私たちがこれまでに実施した宇宙実験でも、キュウリやイネの種子は、スペースシャトルや国際宇宙ステーションの無重力下でも問題なく発芽し、地上の1G区や宇宙で遠心機を利用してつくりだした人工1G区のものと差はみられませんでした。しかし、私たちが実施したアサガオの実験では、宇宙では地上と較べて種子の発芽が不揃いになる傾向がみられました。アサガオは硬実種子ですので、吸水・発芽を促進させるために種子に芽きり(種皮に傷をつける処理)をして国際宇宙ステーションに打ち上げました。地上ではほぼ100%の発芽率でしたが、宇宙では人工重力か無重力の違いによらず、発芽率は低下する傾向にありました。ただ、ほぼ全部の種子が発芽する容器もあり、アサガオの系統によってもばらつきがみられました。したがって、私たちは、宇宙でのアサガオの発芽が不揃いになった直接的な原因が無重力だからとは考えていません。その原因が何かはわかりませんが、何らかの操作・実験上の違いがあったのかもしれませんし、そのよう影響がアサガオのように吸水しにくい種子に大きく出た可能性があります。勿論、重力は、発芽した芽生えの成長には大きな影響を及ぼします。
また、宇宙放射線の種子発芽への影響ですが、乾燥種子は宇宙放射線にも比較的強いと考えられますが、種子が置かれた環境(線種、線量、被爆期間、その他の要因との相互作用など)によって違い、影響を受ける場合も考えられると思います。それを今後の研究で明らかにすることが大切でしょう。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ご質問への回答は、宇宙植物学で同様の研究に携わってこられた東北大学大学院生命科学研究科の高橋秀幸教授にお願いしました。JAXAプロジェクトの実験ではないとのことですが、参考にしてください。
【高橋先生のご回答】
植物への宇宙環境の影響を調べる場合、重力と宇宙放射線がもっとも重要と考えられますが、それらの複合効果や間接的な効果も念頭におく必要があると思います。また、乾燥種子に対する影響をみるのか、生体に対する影響をみるのかも重要と思います。
植物の宇宙実験を行う場合、種子発芽を含めて、調べようとする環境要因以外、例えば温度、水分、光、ガス環境などは同一にするように、研究者は工夫します。しかし、宇宙の無重力空間では、重力の違う環境を用意できても、それによって影響される培地中の水分や気流(風速)を同じようにコントロールすることは容易ではありません。地上と同じ重力下であれば水は下にたまりますが、無重力下では水が培地中に均一に分布し、水環境が違うことになります。また、無重力下では空気対流がなくなり、ガス交換が抑制されます。宇宙放射線も様々な線種からなりますし、最近は、宇宙放射線単独の影響だけでなく、無重力環境との複合効果も注目されています。したがって、地上で宇宙放射線環境を模擬することも容易ではありません。
さて、ご質問の種子発芽に対する重力影響ですが、これまでの宇宙実験の結果をみてみますと、種子発芽が地上重力下よりも宇宙無重力下で劣るという報告もありますが、発芽に無重力の影響はみられなかったという結果が様々な植物種で報告されています。私たちがこれまでに実施した宇宙実験でも、キュウリやイネの種子は、スペースシャトルや国際宇宙ステーションの無重力下でも問題なく発芽し、地上の1G区や宇宙で遠心機を利用してつくりだした人工1G区のものと差はみられませんでした。しかし、私たちが実施したアサガオの実験では、宇宙では地上と較べて種子の発芽が不揃いになる傾向がみられました。アサガオは硬実種子ですので、吸水・発芽を促進させるために種子に芽きり(種皮に傷をつける処理)をして国際宇宙ステーションに打ち上げました。地上ではほぼ100%の発芽率でしたが、宇宙では人工重力か無重力の違いによらず、発芽率は低下する傾向にありました。ただ、ほぼ全部の種子が発芽する容器もあり、アサガオの系統によってもばらつきがみられました。したがって、私たちは、宇宙でのアサガオの発芽が不揃いになった直接的な原因が無重力だからとは考えていません。その原因が何かはわかりませんが、何らかの操作・実験上の違いがあったのかもしれませんし、そのよう影響がアサガオのように吸水しにくい種子に大きく出た可能性があります。勿論、重力は、発芽した芽生えの成長には大きな影響を及ぼします。
また、宇宙放射線の種子発芽への影響ですが、乾燥種子は宇宙放射線にも比較的強いと考えられますが、種子が置かれた環境(線種、線量、被爆期間、その他の要因との相互作用など)によって違い、影響を受ける場合も考えられると思います。それを今後の研究で明らかにすることが大切でしょう。
高橋 秀幸(東北大学大学院生命科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2018-09-11
勝見 允行
回答日:2018-09-11