質問者:
会社員
バラ窓
登録番号4237
登録日:2018-09-14
お茶のタンニンについてお聞きします。お茶のタンニン
今回、質問の前に、タンニンをそちらの「植物Q&A」で検索して見ましたら、「ドングリのタンニン」に関するQ&Aを見つけました。
検索結果では、タンニンも、大きく分けて、「加水分解性タンニン」と「縮合型タンニン」があり、今回、私が問い合わせした「お茶のタンニン」ですが、縮合型タンニンが主たるもので、比較的簡単なフェノール性化合物で加水分解されないため縮合型タンニンに分類されているとの事でした。ただ加水分解性タンニン」も含まれていると言った事も書かれていました。勉強になりました。
話は変わりますが、ブドウにもカテキンが含まれているようですね。特に、皮の色が赤いもの、黒いものに多く含まれているようですね。
また赤ワインなどは、年数が経つほど、カテキン成分が重合し、健康面で、熟成度が低いものより、利点があると言った事を聞きます。いわゆる一時期流行ったフレンチパラドクスと言う事らしいですが。
ただ長寿、健康面で良い言っても飲み過ぎはよくないのでしょうが。
前置きが長くなりましたが、ポリフェノールとタンニンの位置づけ、お茶に含まれているタンニンの成分とドングリに含まれているタンニンの成分に、具体的な成分の違いがあるのでしょうか?
お茶のタンニンの成分は主にカテキンだとか、ドングリのタンニンの成分は何々とか、具体的な違いがあるのでしょうか?
また普通、ポリフェノールは水溶性が一般的の様ですが、お茶に含まれているタンニンの成分は水に溶けにくいタンニンだと理解してよいのでしょうか。
さらに、お茶のタンニンのような「縮合型タンニン型」、収斂作用が弱いタイプは多くないタイプだと言えるのでしょうか?
自然界の植物の多くの種では、「加水分解性タンニン-収斂作用が強い」「縮合型タンニン型-収斂作用が弱いタイプ」のどちらの分布が多いのでしょうか?
バラ窓さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問が多岐にわたりますので調査に時間がかかりましたが、個々のご質問毎に以下にお答えします。最初にいくつかの点を確認させていただきます。
登録番号1152にも述べられているように、タンニンは「皮をなめす作用(タンパク質やアルカロイドと結合し不溶性とする性質)」をもつ植物起源の物質群の総称で、その化学成分を調べてみたら多くがポリフェノール類であった、というものです。「皮をなめす」効果のある物質は他にもあり(現在工業的にはクローム系なめし剤を用いているようです)ますので「なめし剤-タンニン作用のある薬剤-はすべてタンニン」ではありません。また、ポリフェノールとはベンゼン環に水酸基が多数ついた物質の総称で、すべてが「なめし作用」をもつとは限りませんので、「ポリフェノールはすべてタンニン」ではありません。一方、タンニンには希酸で加水分解されて没食子酸(gallic acid)やエラグ酸(ellagic acid)と糖または糖アルコールを生ずる加水分解性型タンニン(ほとんどは水溶性)と、加水分解されない縮合型タンニン(可溶性から不溶性まであります)とに大別されています。
そこでお答えです。
Q: ポリフェノールとタンニンの 位置づけ
A: 前述の通りです。ポリフェノールは化学構造上の呼称、タンニンはタンパク質やアルカロイドとの作用に基づく呼称です。
Q: お茶に含まれているタンニンの成分とドングリに含まれているタンニンの成分に、具体的な成分の違いがあるのでしょうか? お茶のタンニンの成分は主にカテキンだとか、ドングリのタンニンの成分は何々とか、具体的な違いがあるのでしょう
か?
A: 主成分としては大きな違いがあります。お茶(緑茶)のタンニンは主として収斂性の少ないカテキン類、ドングリはブナ科植物の果実の総称で主として縮合型で収斂性が高いものが多いものです。カテキン類は酸化重合しやすく,紅茶製造のような発酵過程では重合してテアフラビンやテアルビジンといった紅茶特有の赤色に変化します。これらは縮合型に分類されドングリには確認されていません。
Q: ポリフェノールは水溶性が一般的の様ですが、お茶に含まれているタンニンの成分は水に溶けにくいタンニンだと理解してよいのでしょうか。
A: ポリフェノールでもクロロゲン酸、カフェー酸(コーヒー酸とも)などのC6-C3型やカテコール、ピロガロール、没食子酸など(C6型やC6-C1型)は水に可溶性ですが、糖と結合していないフラボノイド(C6-C3-C6型)は一般に、水には不溶または難溶です。茶葉タンニンであるカテキン類は冷水に難溶、熱水には可溶とされています。それが茶特有の渋みのもとです。
Q: お茶のタンニンのような「縮合型タンニン型」、収斂作用が弱いタイプは多くないタイプだと言えるのでしょうか?
A: 縮合型タンニンは低分子(カテキン類も含まれています)から分子量3万程度またはそれ以上の高分子物質を含みます。一般に可溶である範囲内で縮合度が大きくなるほど収斂性は高くなる傾向があります。また、同一タンニンでも収斂性は濃度とともに強くなります。
Q: 自然界の植物の多くの種では、「加水分解性タンニン-収斂作用が強い」、「縮合型タンニン型-収斂作用が弱いタイプ」のどちらの分布が多いのでしょうか?
A: 「加水分解性タンニン-収斂作用が強い」、「縮合型タンニン型-収斂作用が弱いタイプ」と型と収斂作用とは対応しているかどうか明らかでありません。収斂性の強い柿渋タンニンは縮合型、五倍子タンニンは加水分解型です。
加水分解型は双子葉植物に分布が限られているようですが、縮合型はシダ類、裸子植物、被子植物すべてに分布していますので、植物界での分布を見れば縮合型タンニンの方が広いといえます。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。ご質問が多岐にわたりますので調査に時間がかかりましたが、個々のご質問毎に以下にお答えします。最初にいくつかの点を確認させていただきます。
登録番号1152にも述べられているように、タンニンは「皮をなめす作用(タンパク質やアルカロイドと結合し不溶性とする性質)」をもつ植物起源の物質群の総称で、その化学成分を調べてみたら多くがポリフェノール類であった、というものです。「皮をなめす」効果のある物質は他にもあり(現在工業的にはクローム系なめし剤を用いているようです)ますので「なめし剤-タンニン作用のある薬剤-はすべてタンニン」ではありません。また、ポリフェノールとはベンゼン環に水酸基が多数ついた物質の総称で、すべてが「なめし作用」をもつとは限りませんので、「ポリフェノールはすべてタンニン」ではありません。一方、タンニンには希酸で加水分解されて没食子酸(gallic acid)やエラグ酸(ellagic acid)と糖または糖アルコールを生ずる加水分解性型タンニン(ほとんどは水溶性)と、加水分解されない縮合型タンニン(可溶性から不溶性まであります)とに大別されています。
そこでお答えです。
Q: ポリフェノールとタンニンの 位置づけ
A: 前述の通りです。ポリフェノールは化学構造上の呼称、タンニンはタンパク質やアルカロイドとの作用に基づく呼称です。
Q: お茶に含まれているタンニンの成分とドングリに含まれているタンニンの成分に、具体的な成分の違いがあるのでしょうか? お茶のタンニンの成分は主にカテキンだとか、ドングリのタンニンの成分は何々とか、具体的な違いがあるのでしょう
か?
A: 主成分としては大きな違いがあります。お茶(緑茶)のタンニンは主として収斂性の少ないカテキン類、ドングリはブナ科植物の果実の総称で主として縮合型で収斂性が高いものが多いものです。カテキン類は酸化重合しやすく,紅茶製造のような発酵過程では重合してテアフラビンやテアルビジンといった紅茶特有の赤色に変化します。これらは縮合型に分類されドングリには確認されていません。
Q: ポリフェノールは水溶性が一般的の様ですが、お茶に含まれているタンニンの成分は水に溶けにくいタンニンだと理解してよいのでしょうか。
A: ポリフェノールでもクロロゲン酸、カフェー酸(コーヒー酸とも)などのC6-C3型やカテコール、ピロガロール、没食子酸など(C6型やC6-C1型)は水に可溶性ですが、糖と結合していないフラボノイド(C6-C3-C6型)は一般に、水には不溶または難溶です。茶葉タンニンであるカテキン類は冷水に難溶、熱水には可溶とされています。それが茶特有の渋みのもとです。
Q: お茶のタンニンのような「縮合型タンニン型」、収斂作用が弱いタイプは多くないタイプだと言えるのでしょうか?
A: 縮合型タンニンは低分子(カテキン類も含まれています)から分子量3万程度またはそれ以上の高分子物質を含みます。一般に可溶である範囲内で縮合度が大きくなるほど収斂性は高くなる傾向があります。また、同一タンニンでも収斂性は濃度とともに強くなります。
Q: 自然界の植物の多くの種では、「加水分解性タンニン-収斂作用が強い」、「縮合型タンニン型-収斂作用が弱いタイプ」のどちらの分布が多いのでしょうか?
A: 「加水分解性タンニン-収斂作用が強い」、「縮合型タンニン型-収斂作用が弱いタイプ」と型と収斂作用とは対応しているかどうか明らかでありません。収斂性の強い柿渋タンニンは縮合型、五倍子タンニンは加水分解型です。
加水分解型は双子葉植物に分布が限られているようですが、縮合型はシダ類、裸子植物、被子植物すべてに分布していますので、植物界での分布を見れば縮合型タンニンの方が広いといえます。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-09-27