質問者:
一般
Alice
登録番号4243
登録日:2018-09-26
自宅の庭に「ヒトツバタゴ」の幼木(5年生ぐらい)を鉢植えで育てています。今年も5月には小さな花をつけていましたが、そろそろ庭に地植えしようと考え、鉢植えの状態で庭の陽当りの良い場所に、鉢植えを置きました。鉢植えの土が乾燥しない程度に隔日で早朝に散水しておりました。みんなのひろば
「ヒトツバタゴ」の狂い咲き
今夏、大阪市内は7月、8月は62日間で真夏日58日、猛暑日23日、熱帯夜50日も続くという、まさに赤道直下のような酷暑に見舞われました。特に最高気温は、日蔭の温度ですから、直射日光のあたる庭では、それよりも数度高くなるので植物にとってはほぼ毎日猛暑日であったと思います。
その期間、8月18日の1日だけ、最低気温が20℃を下回り、前後4日間の最低気温は25℃を下回りました。その前後数日の日中の市内の最高気温は30℃から35℃ですから直射日光を受けている時の温度との落差は20℃を超えていたのではないかと想像します。
ところが、8月22日に大阪市内での月間最高温度37.3℃を記録した後、庭の「ヒトツバタゴ」の葉が全て黄変してしまっていることに気付きました。5年も育てて来て終に枯らしてしまったと思い、とりあえず庭に放置していました。9月4日の台風21号の直撃を受けた翌日、「ヒトツバタゴ」の葉は殆ど散っていました。ところが、9月10日頃には小さな葉が開き始め、9月21日花も咲き始めました。「ヒトツバタゴ」の狂い咲きです。
貴学会のみんなのひろばの狂い咲きについて、登録番号1104は拝読いたしました。ご説明には、『いわゆる狂い咲きは、花芽が分化した後、葉が異常落葉したりしてABAの供給がなくなり、しかもその後高い気温が続いたりすると、休眠状態を経ないで成長し、開花してしまうものと考えられます。狂い咲きは花芽の分化ではなく、花芽の成長と関係したことです。花芽の形成は植物が次世代に生き残るための重要な過程ですから、異常気象など様々なストレスがあると、早く花を咲かせて、種子を作ろうとする状況がしばしばみられるようです。花芽の形成(分化)は日照期間や温度によって調節を受けていることが多いのですが、この際ホルモン様の物質が関わっていることが長い間信じられて、それを追求する研究がおこなわれてきました。しかし、ABAやジベレリンやその他の植物ホルモンのような単純な化合物ではないようです。』とありました。
質問ですが、「ヒトツバタゴ」の狂い咲きについて、その原因がストレスとするなら、物理的には酷暑だったり、或いは8月18日のように急に最低気温が下がったことがトリガーとなって、ホルモン等の生理活性物質が変化した事なのかとも考えていますが、如何でしょうか。ただ、葉が黄変し、落葉してから1か月も経たない短い期間で、葉や花芽が再生するものなのでしょうか。ご教示をお願いいたします。
Alice 様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
今年の異常気象は、特に気温の高さは植物にとってもただならぬ異常な生育環境に置かれたと同じだったかもしれませんね。ヒトツバタゴにも幾つかの栽培品種があるようで、最近はアメリカのものも出回っているようですね。あなたが観察なさった異常な開花現象は品種による差が影響しているかかどうかは分かりませんが(多分ないと思います)、質問で引用なさっている登録番号1104に書かれていることが当てはまるのではないかと思います。
ヒトツバタゴに特定して異常開花を調べた報告はないようです。ご存知かと思いますが、ヒトツバタゴの花芽ができるのは7月下旬から8月上旬にかけてで、頂芽に形成されます。ヒトツバタゴの剪定は花が終わったすぐ後にするのが望ましいのは、花期(5月)を過ぎるとまもなく花芽の形成が始まるからです。通常ですと形成された花芽は気温の低下と日照時間が短くなるという環境の変化に対応して、花芽(葉芽も)は成長を止め、冬の期間を過ごす(休眠)ことになります。そして春の気温の上昇と日照時間が長くなること感知して、休眠していた芽は成長を始めるわけです。
その時アブシシン酸(ABA)やジベレリンといったホルモンが関わっていることは先の記述の通りです。あなたのヒトツバタゴの場合もおそらく花芽の形成だけは通常通り終わっていたものと思われます。しかし、異常気温というストレスのために落葉が起こってしまい、先の記述でも述べていますように、そのために本来休眠に入るはずの形成されたばかりの花芽(葉芽も)の成長が続いてしまったのではないでしょうか。芽の成長を抑えているABAは葉から供給されますので、葉がなくなると抑制が効かなくなります。ご質問のようにストレスによって花芽や葉芽が再生するわけではありません。登録番号1909(植物が枯れる寸前に結実する)も読んでください。
なお、花芽の形成に関わるホルモン(フロリゲン)とそのメカニズムについては、登録番号1104の回答時よりは詳しく解明されていますので、関連のキーワードで検索してみてください。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
今年の異常気象は、特に気温の高さは植物にとってもただならぬ異常な生育環境に置かれたと同じだったかもしれませんね。ヒトツバタゴにも幾つかの栽培品種があるようで、最近はアメリカのものも出回っているようですね。あなたが観察なさった異常な開花現象は品種による差が影響しているかかどうかは分かりませんが(多分ないと思います)、質問で引用なさっている登録番号1104に書かれていることが当てはまるのではないかと思います。
ヒトツバタゴに特定して異常開花を調べた報告はないようです。ご存知かと思いますが、ヒトツバタゴの花芽ができるのは7月下旬から8月上旬にかけてで、頂芽に形成されます。ヒトツバタゴの剪定は花が終わったすぐ後にするのが望ましいのは、花期(5月)を過ぎるとまもなく花芽の形成が始まるからです。通常ですと形成された花芽は気温の低下と日照時間が短くなるという環境の変化に対応して、花芽(葉芽も)は成長を止め、冬の期間を過ごす(休眠)ことになります。そして春の気温の上昇と日照時間が長くなること感知して、休眠していた芽は成長を始めるわけです。
その時アブシシン酸(ABA)やジベレリンといったホルモンが関わっていることは先の記述の通りです。あなたのヒトツバタゴの場合もおそらく花芽の形成だけは通常通り終わっていたものと思われます。しかし、異常気温というストレスのために落葉が起こってしまい、先の記述でも述べていますように、そのために本来休眠に入るはずの形成されたばかりの花芽(葉芽も)の成長が続いてしまったのではないでしょうか。芽の成長を抑えているABAは葉から供給されますので、葉がなくなると抑制が効かなくなります。ご質問のようにストレスによって花芽や葉芽が再生するわけではありません。登録番号1909(植物が枯れる寸前に結実する)も読んでください。
なお、花芽の形成に関わるホルモン(フロリゲン)とそのメカニズムについては、登録番号1104の回答時よりは詳しく解明されていますので、関連のキーワードで検索してみてください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-10-06