一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物と塩分

質問者:   一般   namaehamadanai
登録番号4248   登録日:2018-10-04
台風が通り過ぎたあと、台風一過の晴天だったので洗濯をしていていざ洗濯物を干そうと思い、ベランダの手摺を雑巾で拭いている時、手摺に塩の結晶が付着していました。その時に植物に塩分を与える方法はどうすればよいのだろうと思ったのですが、植物は塩分を全く必要としないのでしょうか。そのことが知りたくて、こんな下らない質問をしました。
namaehamadanai様

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
植物の生育に必要な元素を調べる方法としては、水耕法があります。これまでに得られている知識から、植物が必要とすると予想される塩類を純水(蒸留水、脱イオン水など)に溶かした混合溶液を作り、それをプラスチック容器に入れ、そこにプラスチックウールを浮かべて種を撒く、または発芽後の植物を根の部分がつかるようにして生育試験します。根の呼吸を助けるために、必要に応じて通気します。必須元素のうち、HとOは水から、CはCO2としては空気中から供給されます。陸上植物では、このほかに、N、P、K、Ca、S、Mg、Fe、B、Cl、Mn、Zn、Cu、Mo、Niが必要だとされています。

動物では、Naは必須で、たとえば、細胞膜における物質の吸収や排出、神経細胞の興奮の伝導などに働いています。これに対し、多くの陸上植物は、水耕試験から、生育にNaを必要としないと最近まで考えられていました。しかし、その後、分子生物学的、生化学的研究から、少なくともトウモロコシなどの一部の植物はごく微量のNaを必要とすることが分かってきました。必要量はきわめて微量であり、水耕法で使用する塩類には極めて微量のNaが不純物として含まれていたので、必要性がこれまで認められていなかったのかもしれません。たとえNaが必要であるにせよ、園芸では、土壌はもちろん、市販の肥料にはNaが不純物として含まれているので、肥料としてあえて加える必要性はまったくありません。農業や園芸では、高濃度のNaは塩害といって、植物の生育を妨げることが広く知られています。

櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-10-06