質問者:
大学生
ユズリハ
登録番号4251
登録日:2018-10-05
ギンリョウソウについて調べていたところふと思ったのですが、菌従属栄養植物は光合成を行わないですよね。そこで光合成はしなくても呼吸は普通に行われているんでしょうか。それともする必要はないんでしょうか。また、呼吸しているなら、どのように行なっているのでしょうか。他の植物と同じなのでしょうか。みんなのひろば
菌従属栄養植物の呼吸
素朴な疑問ですが、ご回答お願いいたします。
ユズリハさん
みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
植物、動物、微生物を問わず、すべての細胞は活動のためにエネルギーが必要です。タンパク質、DNAやRNAなどの核酸、細胞膜の構成要素である脂質などの合成には、代謝系の要所要所で、高エネルギー物質であるアデノシン三リン酸(ATP)が必要です。また、生体膜を横切る物質の移動にも、多くの場合ATPが必要です(「みんなの広場」で[ATP]で検索すると80件が出てきます)。ATP[エネルギー充電型]はADP(アデノシン二リン酸) [エネルギー放電型]とリン酸(Pi)に分解されるときに化学的エネルギー(自由エネルギー)を失いますが、細胞はそのエネルギー落差を利用して生活しています。消費されたATPは再生されなければなりません。動物や植物では、ミトコンドリアという細胞器官が、有機物を酸化的に分解する際に得られえる化学エネルギーの落差を利用して、ATPを合成します(酸化的リン酸化)。植物は、これに加えて、葉緑体が光エネルギーの一部を利用してATPを合成します(光リン酸化)。ATP合成の方法としては、この他に、細胞質ゾルにある解糖系という酵素集団が糖類を嫌気的に分解してATPを合成するやり方もあり、コウボのアルコール発酵や、乳酸菌の乳酸発酵が広く知られています。動物や植物細胞では、ATP合成に対する寄与する度合いは低いものの、解糖系もはたらいています。ギンリョウソウはミトコンドリアを持ち、普通の植物と同様に細胞呼吸をして、必要とするATPのほとんどは酸化的リン酸化によって供給されています。
なお、葉緑体は光合成を行う細胞器官ですが、根や貯蔵茎では白色体といって、クロロフィルを持たず、光合成を行わないで貯蔵デンプンなどを合成しており、両者は合わせて色素体と呼ばれます。色素体は固有の遺伝子を持ち、核の遺伝子と共同して、光が当たると光合成機能に必要なすべてのタンパク質を合成して葉緑体に分化しますが、暗所では光合成機能を持たない白色体となります。ギンリョウソウは光合成機能を持たず、生育に必要な有機物の供給を地中の菌類に依存しており、菌依存性植物と呼ばれます。菌依存性植物にも色素体がありますが、光合成に必要な遺伝子の大部分を欠いており、光合成の機能をありません。しかし、デンプン合成などの活性は保持していることが、すくなくとも一部の植物について報告されています。
要約すると、通常の植物は光合成活性を持ち、生育に必要なすべての有機化合物を合成でき、また、菌根菌は有機物の供給を植物に依存しています。一方、菌根菌は、地中の有機物を分解して無機リンを生じ、また、分泌する有機酸によりFeの溶解度を高めるなどして、緑色植物に恩恵をもたらしています。これに対し、ギンリョウソウなどの菌依存性植物は必要な有機物を土壌中の菌類(菌根菌)から一方的に収奪するだけで、菌根菌は恩恵を受けていないと考えられます。
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植物、動物、微生物を問わず、すべての細胞は活動のためにエネルギーが必要です。タンパク質、DNAやRNAなどの核酸、細胞膜の構成要素である脂質などの合成には、代謝系の要所要所で、高エネルギー物質であるアデノシン三リン酸(ATP)が必要です。また、生体膜を横切る物質の移動にも、多くの場合ATPが必要です(「みんなの広場」で[ATP]で検索すると80件が出てきます)。ATP[エネルギー充電型]はADP(アデノシン二リン酸) [エネルギー放電型]とリン酸(Pi)に分解されるときに化学的エネルギー(自由エネルギー)を失いますが、細胞はそのエネルギー落差を利用して生活しています。消費されたATPは再生されなければなりません。動物や植物では、ミトコンドリアという細胞器官が、有機物を酸化的に分解する際に得られえる化学エネルギーの落差を利用して、ATPを合成します(酸化的リン酸化)。植物は、これに加えて、葉緑体が光エネルギーの一部を利用してATPを合成します(光リン酸化)。ATP合成の方法としては、この他に、細胞質ゾルにある解糖系という酵素集団が糖類を嫌気的に分解してATPを合成するやり方もあり、コウボのアルコール発酵や、乳酸菌の乳酸発酵が広く知られています。動物や植物細胞では、ATP合成に対する寄与する度合いは低いものの、解糖系もはたらいています。ギンリョウソウはミトコンドリアを持ち、普通の植物と同様に細胞呼吸をして、必要とするATPのほとんどは酸化的リン酸化によって供給されています。
なお、葉緑体は光合成を行う細胞器官ですが、根や貯蔵茎では白色体といって、クロロフィルを持たず、光合成を行わないで貯蔵デンプンなどを合成しており、両者は合わせて色素体と呼ばれます。色素体は固有の遺伝子を持ち、核の遺伝子と共同して、光が当たると光合成機能に必要なすべてのタンパク質を合成して葉緑体に分化しますが、暗所では光合成機能を持たない白色体となります。ギンリョウソウは光合成機能を持たず、生育に必要な有機物の供給を地中の菌類に依存しており、菌依存性植物と呼ばれます。菌依存性植物にも色素体がありますが、光合成に必要な遺伝子の大部分を欠いており、光合成の機能をありません。しかし、デンプン合成などの活性は保持していることが、すくなくとも一部の植物について報告されています。
要約すると、通常の植物は光合成活性を持ち、生育に必要なすべての有機化合物を合成でき、また、菌根菌は有機物の供給を植物に依存しています。一方、菌根菌は、地中の有機物を分解して無機リンを生じ、また、分泌する有機酸によりFeの溶解度を高めるなどして、緑色植物に恩恵をもたらしています。これに対し、ギンリョウソウなどの菌依存性植物は必要な有機物を土壌中の菌類(菌根菌)から一方的に収奪するだけで、菌根菌は恩恵を受けていないと考えられます。
櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-10-17