質問者:
大学生
ユズリハ
登録番号4260
登録日:2018-10-22
ナンバンギセルなどの寄生植物について調べていたのですが、なぜ寄生植物の宿主がほぼ決まっているのでしょうか。その植物でないといけない理由があるのでしょうか。寄生植物の宿主
御回答お願いいたします。
ユズリハ さん
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ある植物種と他の植物種(細菌類、菌類なども含め)との寄生あるいは共生の例は沢山あり、寄生(共生)が成り立つ仕組みを明らかにしようとする研究は盛んにおこなわれています。ご質問の「なぜ寄生植物の宿主がほぼ決まっているのか」は宿主特異性がどのようにして起こるのかの問題で、植物間の相互認識に関わる大きな課題です。しかし、寄生植物でもヤドリギのように宿主の範囲が広いもの(いろいろな植物種にも寄生できる)からナンバンギセルのようにほとんどススキ(イネ科、カヤツリグサ科、ショウガ科にも)に限られるもの、根粒菌とマメ科との共生のように厳密に宿主を認識するものがあり、宿主特異性の仕組みは様々です。寄生の多くは宿主の根を介する場合(根寄生)が多いので根寄生の特異性についてごく簡単にご説明します。
先ず宿主の根が寄生植物の種子発芽を促進する特殊な化学物質を分泌します。発芽した寄生植物の根は宿主の根に接触して吸収根(吸器)を形成して侵入することが必要です。したがって、寄生植物の種子が、宿主の根のごく近辺になければ寄生は成立しません(寄生植物は単独では成長できませんので)。寄生植物側は、どのような化学物質を認識して発芽するかが宿主の特異性を決めることになります。化学物質としてはストリゴラクトン及びその関連物質が有名ですが、その他にいろいろな物質(既知の植物ホルモンを含む)が同定されています。宿主側はいろいろな関連物質の組み合わせ(量比をふくめ)を分泌するので寄生側は、複数の化合物の組み合わせを認識することで特異性が決まってくるようです。発芽した寄生根は宿主内に侵入後は成長を継
続して宿主からの栄養供給系を作り上げますが、その過程にも宿主側の化学物質が関与しているとされています。つまり、寄生側種子の発芽促進、侵入した(感染が成立した)寄生植物の生長促進(保証)があって始めて寄生が成り立つと考えられています。ナンバンギセルの場合もススキの根から分泌される何らかの化学物質を認識して感染、寄生が成立すると考えられますがその詳細はよく分かりません。共生で有名な根粒菌とマメ科の場合も、宿主マメの根からある種のフラボノイドが分泌され、土壌中の根粒菌はフラボノイドに反応して根粒菌の種類(型)に固有な特殊な物質(ノッド因子と呼ばれています)を生産します。宿主マメの根毛先端はこの固有のノッド因子を厳密に認識して根粒菌を巻き込むように変形して感染糸形成、根粒形成に至るので
マメの種と根粒菌の種(型)には高い特異性があることになります。
寄生、共生には沢山の組み合わせがあります。宿主種、寄生種との相互認識は両者がもつ化学物質を介していますが、認識幅が緩い場合、厳密な場合がありそれぞれの仕組みは今後の研究に任されています。
みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ある植物種と他の植物種(細菌類、菌類なども含め)との寄生あるいは共生の例は沢山あり、寄生(共生)が成り立つ仕組みを明らかにしようとする研究は盛んにおこなわれています。ご質問の「なぜ寄生植物の宿主がほぼ決まっているのか」は宿主特異性がどのようにして起こるのかの問題で、植物間の相互認識に関わる大きな課題です。しかし、寄生植物でもヤドリギのように宿主の範囲が広いもの(いろいろな植物種にも寄生できる)からナンバンギセルのようにほとんどススキ(イネ科、カヤツリグサ科、ショウガ科にも)に限られるもの、根粒菌とマメ科との共生のように厳密に宿主を認識するものがあり、宿主特異性の仕組みは様々です。寄生の多くは宿主の根を介する場合(根寄生)が多いので根寄生の特異性についてごく簡単にご説明します。
先ず宿主の根が寄生植物の種子発芽を促進する特殊な化学物質を分泌します。発芽した寄生植物の根は宿主の根に接触して吸収根(吸器)を形成して侵入することが必要です。したがって、寄生植物の種子が、宿主の根のごく近辺になければ寄生は成立しません(寄生植物は単独では成長できませんので)。寄生植物側は、どのような化学物質を認識して発芽するかが宿主の特異性を決めることになります。化学物質としてはストリゴラクトン及びその関連物質が有名ですが、その他にいろいろな物質(既知の植物ホルモンを含む)が同定されています。宿主側はいろいろな関連物質の組み合わせ(量比をふくめ)を分泌するので寄生側は、複数の化合物の組み合わせを認識することで特異性が決まってくるようです。発芽した寄生根は宿主内に侵入後は成長を継
続して宿主からの栄養供給系を作り上げますが、その過程にも宿主側の化学物質が関与しているとされています。つまり、寄生側種子の発芽促進、侵入した(感染が成立した)寄生植物の生長促進(保証)があって始めて寄生が成り立つと考えられています。ナンバンギセルの場合もススキの根から分泌される何らかの化学物質を認識して感染、寄生が成立すると考えられますがその詳細はよく分かりません。共生で有名な根粒菌とマメ科の場合も、宿主マメの根からある種のフラボノイドが分泌され、土壌中の根粒菌はフラボノイドに反応して根粒菌の種類(型)に固有な特殊な物質(ノッド因子と呼ばれています)を生産します。宿主マメの根毛先端はこの固有のノッド因子を厳密に認識して根粒菌を巻き込むように変形して感染糸形成、根粒形成に至るので
マメの種と根粒菌の種(型)には高い特異性があることになります。
寄生、共生には沢山の組み合わせがあります。宿主種、寄生種との相互認識は両者がもつ化学物質を介していますが、認識幅が緩い場合、厳密な場合がありそれぞれの仕組みは今後の研究に任されています。
今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-11-05