一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アレチヌスビトハギの毛

質問者:   大学生   アデニウム
登録番号4265   登録日:2018-10-30
アレチヌスビトハギの実を透明化し光学顕微鏡で観察したところ、1つの細胞からなるかぎ状の毛、複数の細胞からなるまっすぐの毛の2種類が観察できました。
色々調べてみましたが、かぎ状の毛についての記述しか見当たらず、付着時に2種の毛がある方が良いのか、他の機能を持つ毛なのか分からなかったため質問させていただきました。
アデニウム さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
秋に河原の藪や荒れ地の中を歩くといろいろな種子がズボンに付着しますね。代表的なものにオナモミ、センダングサ、イノコズチやヌスビトハギなどの種子があります。オナモミの果実は適当な大きさなので子供の頃に投げ合ったものです。よく知られているように動物体表面の毛に[ひっついて]種子を散布する戦略です。鋭い鈎状の毛、密生した細毛、先端に粘液を分泌した細毛などがあります。アレチヌスビトハギは北米からの外来種で今では広く分布しているようです。果実の果皮表面に密生する鈎状の細毛がマジックテープと同じような仕組みで衣類に付着するとされています。表皮系の細胞が伸長あるいは細胞分裂をして毛を形成したものでトライコーム(もうじ)と総称されているものです(トライコームについてはこのコーナーの登録番号2383, 3829, 4116, 4216を参照して下さい)。アレチヌスビトハギ(Desnidium paniculatum)と同じ属のヌスビトハギ(Desmodium podocarpumsubsp. oxyphyllum)では走査電子顕微鏡観察から、果実表面に密生する毛は2細胞からなり先端は鈎状、基部にはいくつかの細胞からなる離層状の構造がある、との記載がありました(http://idc.wakayama-edc.big-.jp/updfile/contents/35/2/html/toge/issue.html)。
一方、ブラジル産13種のDesmodiumu属を調べた結果、果皮表面のトライコームの形態は鈎状、単列(枝分かれなし)、球茎多細胞(乳頭状)、球茎単細胞、短剣状が認められ、これらの形態の組み合わせは種の同定に利用できるとの報告(http://www.scielo.sa.cr/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0034-77442014000400026)がありました。
これらの結果から、ヌスビトハギ属(Desmodium)では、種によって異なった形態のトライコームの混合分布に特徴があることが推定出来ます。アレチヌスビトハギでは鈎状が主で複数の鈎なし細毛(乳頭状)が共存する特徴があると言うことではないでしょうか。この特定の種について走査電子顕微鏡による観察調査が待たれるところです。

今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-11-27
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