質問者:
一般
のりこ
登録番号4270
登録日:2018-11-03
先日、八つ手の孔辺細胞について質問に回答いただきありがとうございました。「気孔装置」は孔辺細胞・副細胞・近隣細胞で構成されていると教えて戴きました。みんなのひろば
ヤツデの気孔は他のものとは違うのでしょうか。
わたしが高校で習ったときは、副細胞・近隣細胞の説明はまったくなく、そのため、 そういう細胞があることを初めて知りました。
また、これらが、どののような配置になっているのかも全く分かりません。
これら3種類の細胞が、どのような位置にあり、どのように孔辺細胞をサポートしているかを知りたいと思います。
(1)このことを知るための本(日本語か英語)を教えていたけないか、少し難しい本でも良いので、教えて戴けないでしょうか。
八つ手の気孔は、他と少し違っていたのだということはよく分かりましたし、私の見間違いではなかったらしいことはわかりましたし、そのためにわざわざ顕微鏡で調べていただいたこと、心から感謝しております。
しかし、少しわかったものの、なぜ、どのようになったいのかということがはっきりしないとスッキリ致しません。、
たとえば、なぜ、(2)八つ手の葉だけなのか、多分、他の植物でもいろいろあるのでしょうか。
このようなことを、専門のえらい先生にお聞きしてよいのか、よくは分かりませんが、一度、このあたりのことを教えて戴ければと思います。
申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
のりこ 様
再度、質問をお寄せ下さりありがとうございます。
この質問には気孔開閉のメカニズムについて研究されている島崎研一郎先生(九州大学)から下記の回答をいただきましたので、ご参考になさって下さい。
【島崎先生からの回答】
気孔は一対の孔辺細胞に囲まれた孔のことで、それ以外の気孔はこれまで知られていません。4億年以上前の初期陸上植物の気孔も同様です。孔辺細胞には2つの形があります。腎臓型と亜鈴型で、前者は多くの双子葉植物や単子葉植物にも見られ、後者はイネ科植物(トウモロコシ、サトウキビ)に見られます。隣接細胞というのは孔辺細胞のそばにある表皮細胞のことで、表皮細胞のままのものと分化特殊化した副細胞とがあります。表皮細胞のままの場合は形が不定形のもの(ジグソーパズルのような形)が多く、副細胞化したものでは孔辺細胞に沿うようにして一定の形になります。前者はソラマメ、後者はツユクサがその例です。この2種類の植物では表皮が簡単に剥離できますので、顕微鏡で簡単に観察出来ます。来夏にでも観察なさって下さい。
また、気孔は孔ですので、孔辺細胞、副細胞、あるいは、表皮細胞を含めて、気孔装置という言葉を使う事があります。
副細胞を持つ気孔はより進化したもので、孔辺細胞に並行して存在し、孔辺細胞との間でカリウム(K+) などのイオンの輸送を行います。例えば、気孔が開く時には副細胞のイオンが孔辺細胞に輸送され、閉じる時には孔辺細胞のイオンが副細胞に輸送されます。表皮細胞の場合、そのような機能の分化はありません。副細胞を持つ気孔の方が総じて気孔開閉の速度が速くなります。
表皮細胞や副細胞の形は植物によって異なり、さらに、葉の表面が平らな場合や埋まりこんで存在する場合もあり、気孔を顕微鏡で見た時、種類によって大きく違ってみえることもあると思います。気孔に関する最も総花的な教科書を一つだけ挙げておきます。
著書名:『Stomata(第2版)』; 著者名:Collin Willmer and Mark Fricker; 出版社名:Chapman & Hall.
なぜヤツデの葉だけなのかというのはとても難しい質問です。この質問に答えるにはすべての植物の気孔周辺の様子を知る必要があるでしょうし、わたしの知る限り文献にも見当たりません。なぜ、そのような形になったかというのは、その植物の生育環境をみれば何らかのヒントが得られる可能性があります。しかし、ヤツデが特殊な環境に生育しているわけではありませんので、スッキリするように答えることはできそうにありません。前述した専門書にも特徴的な例がいくつか挙げられているだけです。
再度、質問をお寄せ下さりありがとうございます。
この質問には気孔開閉のメカニズムについて研究されている島崎研一郎先生(九州大学)から下記の回答をいただきましたので、ご参考になさって下さい。
【島崎先生からの回答】
気孔は一対の孔辺細胞に囲まれた孔のことで、それ以外の気孔はこれまで知られていません。4億年以上前の初期陸上植物の気孔も同様です。孔辺細胞には2つの形があります。腎臓型と亜鈴型で、前者は多くの双子葉植物や単子葉植物にも見られ、後者はイネ科植物(トウモロコシ、サトウキビ)に見られます。隣接細胞というのは孔辺細胞のそばにある表皮細胞のことで、表皮細胞のままのものと分化特殊化した副細胞とがあります。表皮細胞のままの場合は形が不定形のもの(ジグソーパズルのような形)が多く、副細胞化したものでは孔辺細胞に沿うようにして一定の形になります。前者はソラマメ、後者はツユクサがその例です。この2種類の植物では表皮が簡単に剥離できますので、顕微鏡で簡単に観察出来ます。来夏にでも観察なさって下さい。
また、気孔は孔ですので、孔辺細胞、副細胞、あるいは、表皮細胞を含めて、気孔装置という言葉を使う事があります。
副細胞を持つ気孔はより進化したもので、孔辺細胞に並行して存在し、孔辺細胞との間でカリウム(K+) などのイオンの輸送を行います。例えば、気孔が開く時には副細胞のイオンが孔辺細胞に輸送され、閉じる時には孔辺細胞のイオンが副細胞に輸送されます。表皮細胞の場合、そのような機能の分化はありません。副細胞を持つ気孔の方が総じて気孔開閉の速度が速くなります。
表皮細胞や副細胞の形は植物によって異なり、さらに、葉の表面が平らな場合や埋まりこんで存在する場合もあり、気孔を顕微鏡で見た時、種類によって大きく違ってみえることもあると思います。気孔に関する最も総花的な教科書を一つだけ挙げておきます。
著書名:『Stomata(第2版)』; 著者名:Collin Willmer and Mark Fricker; 出版社名:Chapman & Hall.
なぜヤツデの葉だけなのかというのはとても難しい質問です。この質問に答えるにはすべての植物の気孔周辺の様子を知る必要があるでしょうし、わたしの知る限り文献にも見当たりません。なぜ、そのような形になったかというのは、その植物の生育環境をみれば何らかのヒントが得られる可能性があります。しかし、ヤツデが特殊な環境に生育しているわけではありませんので、スッキリするように答えることはできそうにありません。前述した専門書にも特徴的な例がいくつか挙げられているだけです。
島崎 研一郎(九州大学名誉教授)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2018-11-03
佐藤 公行
回答日:2018-11-03