質問者:
高校生
Oe
登録番号4283
登録日:2018-11-16
スギ花粉及び裸子植物の花粉に興味があり「花粉学研究 増訂版」(上野実朗・著)という本を読み、書籍内にあった気囊に興味を持ったのですがインターネットで検索しても裸子植物の花粉にある袋状のものということしか分からなかったので困っています。気囊とはどういう形状でなぜ被子植物では見られないのか教えて頂きたいです。また「花粉学研究 増訂版」は1987年に出版された書籍なので、近年の研究についても分からなかったので、気囊に関する近年の研究動向や研究者の方を紹介して頂きたいです。よろしくお願いします。
みんなのひろば
気囊とはどういうものですか?
Oe様
みんなのひろばの植物Q&Aを利用下さりありがとうございます。
花粉の細胞壁は内壁と外壁からできています。内壁は通常の細胞壁のようにセルロースやペクチンが主な構成成分です。外壁はスポロポレニンという物質を主成分として脂質、リグニンなどから構成されており、強固な化学的性質をもっています。王水でも分解しないほど安定です。外壁はさらに、内層、外層の二層から成り立っています。気嚢は外層の一部が伸び出し、内層との間に空間ができることによって生じた袋状の構造です。マツ科植物の花粉は二つの気嚢(二葉型)をもっていますが、マキ科の植物の花粉には、フリル状の気嚢が環状に花粉を取り囲んだ一葉型のものや、三葉型のものも見られます。一葉型は古生代の石炭紀に現われ、二畳紀〈ペルム紀〉には二葉型が見られるということです。花粉の外壁は安定していますので化石として残りますから、各地層に含まれる花粉の化石を調べることでわかります。
裸子植物のほとんどは風媒花ですので、気嚢の働きとして花粉を風で送粉するのに適した構造ではないかと考えられています。また、二葉型の花粉では、乾燥すると気嚢が上部に持ち上がり、二つの気嚢の間にある発芽孔を覆うようになることから、発芽孔の乾燥を防ぐはたらきがあるということも言われています。
最近の研究動向ですが、Pub Med という検索サイトを用いて検索してみました。Saccus 〈気嚢〉、Pinaceae (マツ科)で検索したところ、比較的最近の論文では、気嚢のはたらきを受粉時に分泌される水滴上への浮遊力と胚珠の付き方と関連して解析しているものがいくつか見られました。新しい展開かと思います。また、気嚢をもつ花粉の風による飛翔力を数学的モデルを用いて検証した論文もありました。まだまだ気嚢のはたらきには不明なところが多いようです。
上野実朗著「花粉学研究 増補版」を読まれたとのこと、厚い本を頑張りましたね。感心しました。
みんなのひろばの植物Q&Aを利用下さりありがとうございます。
花粉の細胞壁は内壁と外壁からできています。内壁は通常の細胞壁のようにセルロースやペクチンが主な構成成分です。外壁はスポロポレニンという物質を主成分として脂質、リグニンなどから構成されており、強固な化学的性質をもっています。王水でも分解しないほど安定です。外壁はさらに、内層、外層の二層から成り立っています。気嚢は外層の一部が伸び出し、内層との間に空間ができることによって生じた袋状の構造です。マツ科植物の花粉は二つの気嚢(二葉型)をもっていますが、マキ科の植物の花粉には、フリル状の気嚢が環状に花粉を取り囲んだ一葉型のものや、三葉型のものも見られます。一葉型は古生代の石炭紀に現われ、二畳紀〈ペルム紀〉には二葉型が見られるということです。花粉の外壁は安定していますので化石として残りますから、各地層に含まれる花粉の化石を調べることでわかります。
裸子植物のほとんどは風媒花ですので、気嚢の働きとして花粉を風で送粉するのに適した構造ではないかと考えられています。また、二葉型の花粉では、乾燥すると気嚢が上部に持ち上がり、二つの気嚢の間にある発芽孔を覆うようになることから、発芽孔の乾燥を防ぐはたらきがあるということも言われています。
最近の研究動向ですが、Pub Med という検索サイトを用いて検索してみました。Saccus 〈気嚢〉、Pinaceae (マツ科)で検索したところ、比較的最近の論文では、気嚢のはたらきを受粉時に分泌される水滴上への浮遊力と胚珠の付き方と関連して解析しているものがいくつか見られました。新しい展開かと思います。また、気嚢をもつ花粉の風による飛翔力を数学的モデルを用いて検証した論文もありました。まだまだ気嚢のはたらきには不明なところが多いようです。
上野実朗著「花粉学研究 増補版」を読まれたとのこと、厚い本を頑張りましたね。感心しました。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-11-26