質問者:
教員
みのりのあき
登録番号4286
登録日:2018-11-21
ペーパークロマトグラフィーによる光合成色素分離の原理についてお伺いします。光合成色素の分離
展開液への溶解度やろ紙への吸着度の違いということが書籍には書かれていますが、色素の分子量は関係しないのでしょうか。調べてみると重い順に下方の分離されています。偶然でしょうか、それとも影響があるのでしょうか。
みのりのあき 様
このコーナーをご利用くださりありがとうございます。
まずは事実の確認から始めさせていただきます。例えば、高校の実験書などに書かれている石油エーテルとアセトンの混合液(10対1)を展開溶媒とし、ホウレンソウ緑葉抽出物のペーパークロマトフィーを行うと、β-カロテンが一番先を動き、次いでクロロフィルa、クロロフィルb、ルテイン、ビオラキサンチン、ネオキサンチンの順に色素が移動すると思いますが、これで間違いはありませんか。この分離では、β-カロテン・クロロフィルa・クロロフィルbの3成分に着目すると、分子量の小さい順に動いていることになっております。しかし、ルテイン・ビオラキサンチン・ネオキサンチンなどのキサントフィル類を考慮に入れると、「分子量の小さい順番に早く(重い順に下方へ!)」という関係は成り立っていないことになります。
以上、まわりくどくい説明から始めましたが、ペーパークロマトグラフィーによる光合成色素の分離は、質問文にも書かれているように、(1)担体であるろ紙(セルロース)の表面を覆っている液体で構成される「固定相」と展開溶媒である「移動相」への各色素の分配係数の違い(親水性・疎水性のバランス)と、(2)各色素とろ紙との親和性の違い(セルロース分子の水酸基への水素結合や担体の他の部分への疎水性相互作用などに因る)の総和によって決まることになります。原理的には、(1)の場合は「分配クロマトグラフィー」、(2)の場合には「吸着クロマトグラフィー」となりますが、実際には溶媒条件によって事情は大変複雑になります。場合によっては前述以外の相互作用が分離に関係することもあり得ますが、分子のサイズ(分子量)に応じてクロマト担体への浸透性が違って来ることにより分離される「サイズ排除クロマトグラフィー」のような原理は働いていないものと思われます。
分離の原理について考えるに当たっては、展開溶媒をいろいろ変えて実験をして見られることをお勧めします。
このコーナーをご利用くださりありがとうございます。
まずは事実の確認から始めさせていただきます。例えば、高校の実験書などに書かれている石油エーテルとアセトンの混合液(10対1)を展開溶媒とし、ホウレンソウ緑葉抽出物のペーパークロマトフィーを行うと、β-カロテンが一番先を動き、次いでクロロフィルa、クロロフィルb、ルテイン、ビオラキサンチン、ネオキサンチンの順に色素が移動すると思いますが、これで間違いはありませんか。この分離では、β-カロテン・クロロフィルa・クロロフィルbの3成分に着目すると、分子量の小さい順に動いていることになっております。しかし、ルテイン・ビオラキサンチン・ネオキサンチンなどのキサントフィル類を考慮に入れると、「分子量の小さい順番に早く(重い順に下方へ!)」という関係は成り立っていないことになります。
以上、まわりくどくい説明から始めましたが、ペーパークロマトグラフィーによる光合成色素の分離は、質問文にも書かれているように、(1)担体であるろ紙(セルロース)の表面を覆っている液体で構成される「固定相」と展開溶媒である「移動相」への各色素の分配係数の違い(親水性・疎水性のバランス)と、(2)各色素とろ紙との親和性の違い(セルロース分子の水酸基への水素結合や担体の他の部分への疎水性相互作用などに因る)の総和によって決まることになります。原理的には、(1)の場合は「分配クロマトグラフィー」、(2)の場合には「吸着クロマトグラフィー」となりますが、実際には溶媒条件によって事情は大変複雑になります。場合によっては前述以外の相互作用が分離に関係することもあり得ますが、分子のサイズ(分子量)に応じてクロマト担体への浸透性が違って来ることにより分離される「サイズ排除クロマトグラフィー」のような原理は働いていないものと思われます。
分離の原理について考えるに当たっては、展開溶媒をいろいろ変えて実験をして見られることをお勧めします。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-11-22