質問者:
一般
MAYU
登録番号4309
登録日:2018-12-18
埼玉の狭山丘陵に住んでいます。みんなのひろば
ケヤキが紅葉していません
毎年、森や林のきれいな紅葉を楽しんでいますが、今年(2018)は、ケヤキが紅葉せずに、カラカラになった茶色い葉っぱが枝先にいっぱい残っています。
雨が降っても風が吹いても、落ちずに、そのままです。
所沢や近郊の市街地のケヤキ並木も、軒並み同じ状態です。
カエデやイチョウ、桜は紅葉しました。
何が原因だったのでしょうか。
また、葉が落ちないことで、来年春先に影響はあるのでしょうか。
MAYU様
みんなのひろばの植物Q&Aのコーナーをご利用いただきありがとうございます。
先ずはじめに、落葉までの過程をごく簡単にまとめてみます。夏が過ぎると日長が短く、気温が低くなります。それに伴い、中、高緯度地域の落葉樹では、葉の光合成や根の吸水力も低下し、葉の老化が始まります。老化の過程で葉は紅葉し、やがて落葉します。紅葉は、緑色色素のクロロフィルが分解され、それまでに蓄積していた色素や新たに合成された色素が目立つようになったためです。落葉がおきる時には、葉柄の基部に葉柄を横切るように特別な組織(離層)が形成されます。落葉は離層細胞間の接着がゆるむことによっておこります。接着のゆるみは酵素の働きによっておきます。
私は海に比較的近い場所に住んでいますが、今年の秋にきた台風のあと、ちょうどご質問にあったような現象が見られました。ただ、この地方では、ケヤキだけでなく、イチョウ、フウなど多くの樹種が、紅葉しないで枯れた葉が樹木に残るという現象を示しました。おそらく台風によってもたらされた潮風による塩害だろうと推察されます。紅葉に入る前に塩害によって葉が枯死し、まだ離層形成の過程に入っていなかったため落葉せずに、枯れた葉が樹木に残ったと考えると説明がつくように思います。
さてご質問ですが、お答えするのがたいへん難しい質問です。狭山丘陵はかなり内陸に位置していますので、塩害とは考えにくいように思われます。寒風による障害も考えてみましたが、他の樹木には影響ないようですので、たとえば寒風を受けやすい樹高の高さを考えてみました。寒風が当たり易い先端の高いところに枯葉が残るというのは、寒風障害を受けたという考えを支持するように思われます。しかし、今年の秋に、狭山丘陵で実際に障害を与えるような寒風が吹いたのか、ケヤキの樹高が他の植物より高いのかといった資料を持っていませんので、当否はわかりません。障害を受けたのではない場合を考えてみます。毎年紅葉していたケヤキが今年紅葉しなかったそうですが、他の樹種では紅葉しているようですので、ケヤキの紅葉、落葉だけに影響を与える要因を考えないといけません。紅葉や離層の形成は光や温度条件で大きな影響を受けることが知られていますが、ケヤキだけが影響を受けるような条件は知りません。また、そのような環境要因の変動が狭山丘陵で今年だけ見られたことを示す資料も持ち合わせておりません。ということで、回答になっておりませんがご了承下さい。
枯葉が落ちないで樹木本体に残るという性質は枯凋性といわれ、ブナ科、カバノキ科、クスノキ科などの樹木で多く見られます。本コーナーでもしばしば取り上げられています(登録番号205, 2622)。その生態学的な意義については登録番号4069の回答で、植物生理生態学的なはたらきの進化の視点からの解説が登録番号526の回答で見られます。また、登録番号326には植物生理学的な落葉のメカニズムが解説されています。塩害に関しては、登録番号0126, 2743で取り上げられています。参考になると思いますので、ぜひご覧になって下さい。
みんなのひろばの植物Q&Aのコーナーをご利用いただきありがとうございます。
先ずはじめに、落葉までの過程をごく簡単にまとめてみます。夏が過ぎると日長が短く、気温が低くなります。それに伴い、中、高緯度地域の落葉樹では、葉の光合成や根の吸水力も低下し、葉の老化が始まります。老化の過程で葉は紅葉し、やがて落葉します。紅葉は、緑色色素のクロロフィルが分解され、それまでに蓄積していた色素や新たに合成された色素が目立つようになったためです。落葉がおきる時には、葉柄の基部に葉柄を横切るように特別な組織(離層)が形成されます。落葉は離層細胞間の接着がゆるむことによっておこります。接着のゆるみは酵素の働きによっておきます。
私は海に比較的近い場所に住んでいますが、今年の秋にきた台風のあと、ちょうどご質問にあったような現象が見られました。ただ、この地方では、ケヤキだけでなく、イチョウ、フウなど多くの樹種が、紅葉しないで枯れた葉が樹木に残るという現象を示しました。おそらく台風によってもたらされた潮風による塩害だろうと推察されます。紅葉に入る前に塩害によって葉が枯死し、まだ離層形成の過程に入っていなかったため落葉せずに、枯れた葉が樹木に残ったと考えると説明がつくように思います。
さてご質問ですが、お答えするのがたいへん難しい質問です。狭山丘陵はかなり内陸に位置していますので、塩害とは考えにくいように思われます。寒風による障害も考えてみましたが、他の樹木には影響ないようですので、たとえば寒風を受けやすい樹高の高さを考えてみました。寒風が当たり易い先端の高いところに枯葉が残るというのは、寒風障害を受けたという考えを支持するように思われます。しかし、今年の秋に、狭山丘陵で実際に障害を与えるような寒風が吹いたのか、ケヤキの樹高が他の植物より高いのかといった資料を持っていませんので、当否はわかりません。障害を受けたのではない場合を考えてみます。毎年紅葉していたケヤキが今年紅葉しなかったそうですが、他の樹種では紅葉しているようですので、ケヤキの紅葉、落葉だけに影響を与える要因を考えないといけません。紅葉や離層の形成は光や温度条件で大きな影響を受けることが知られていますが、ケヤキだけが影響を受けるような条件は知りません。また、そのような環境要因の変動が狭山丘陵で今年だけ見られたことを示す資料も持ち合わせておりません。ということで、回答になっておりませんがご了承下さい。
枯葉が落ちないで樹木本体に残るという性質は枯凋性といわれ、ブナ科、カバノキ科、クスノキ科などの樹木で多く見られます。本コーナーでもしばしば取り上げられています(登録番号205, 2622)。その生態学的な意義については登録番号4069の回答で、植物生理生態学的なはたらきの進化の視点からの解説が登録番号526の回答で見られます。また、登録番号326には植物生理学的な落葉のメカニズムが解説されています。塩害に関しては、登録番号0126, 2743で取り上げられています。参考になると思いますので、ぜひご覧になって下さい。
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-12-30