一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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大豆貯蔵タンパク質の分解について。

質問者:   会社員   片山
登録番号0431   登録日:2005-11-26
お疲れ様です。

トピックスの方に、植物種子の液胞の中には、貯蔵物質が入っていると書いてありました。
大豆のような、タンパク質が豊富な種子では、タンパク質も液胞に貯蔵されているのでしょうか?

もし液胞に貯蔵されているのであれば、それらのタンパク質は、発芽時にどんな酵素(プロテアーゼだとは思うのですが)で、どこで分解されてペプチドやアミノ酸ができるのでしょうか?

自分なりに調べてみたのですが、なかなか見つからず、困っています。
お忙しい中申し訳ありませんが、お教えいただけましたら、幸いです。
片山 さん

植物の種子は次世代が自立栄養を出来るようになるまでの栄養分をデンプン、タンパク質や脂肪の形で貯蔵している貯蔵器官です。植物種によって主として貯蔵する物質が異なりイネ、ムギ、エンドウなどのように主にデンプンを貯蔵するものをデンプン種子、ゴマ、アブラナ、ヒマなど脂肪を主とするものを脂肪種子と呼んでいますが、タンパク質は窒素の供給源として不可欠の貯蔵形態でどちらの型の種子にもかなり多量に貯蔵されています。中でもダイズはタンパク質、脂肪を多く貯蔵しますので、食糧としても重要なタンパク質源、脂肪源となっています。
種子の貯蔵物質はすべて液胞に蓄えられるのではなく、デンプンは葉緑体と同系のアミロプラストという小胞に、タンパク質は液胞由来のプロテインボディ、脂肪はやはり液胞系のオイルボディと呼ばれる小胞に安定な形で蓄えられます。
種子が発芽をはじめると細胞基質でいろいろなプロテアーゼ(蛋白質分解酵素)が生合成されプロテインボディへ輸送されて貯蔵タンパク質をアミノ酸まで分解します。
生成したアミノ酸はプロテインボディから外へ排出され、成長する幼植物へ供給されます。
プロテインボディ/液胞内に輸送されて働くプロテアーゼは酵素の活性中心によってメタロプロテアーゼ(金属プロテアーゼ-亜鉛やコバルト、マンガンなどを必要とする活性中心をもつ)、システイン、セリン、アスパラギン酸など構成アミノ酸を活性中心とする酵素などがあり、それぞれ異なった働き方で貯蔵タンパク質を最終的にアミノ酸まで分解します。

ご質問に沿って貯蔵タンパク質の分解だけに限ってお答えしましたが、液胞および関連小胞は貯蔵細胞ばかりでなく、葉、茎などの一般細胞内でも細胞基質のイオン濃度、pH、糖濃度その他必要物質の恒常性を保つなど重要な働きをしており、各種細胞内小胞の形成や働きは現在の植物科学でもっとも活発に研究が展開されている領域の一つです。
JSPPサイエンスアドバイザー
 今関 英雅
回答日:2005-12-09
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