一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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塩味のフルーツはありますか?

質問者:   一般   為清勝彦
登録番号4315   登録日:2018-12-23
アイスプラントのように葉や茎の部分にナトリウムを蓄積する植物がありますが、果肉の部分にナトリウムを蓄える植物(塩味のする果実)は存在するのでしょうか。もし存在しないのであれば、その理由はどのように考えられますか?
為清さま

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
しょっぱい果物というのは聞いたことがなかったので調べてみました。一つだけありました。Carpobrotus glaucescens (Haw.) Schwantes というハマミズナ( Aizoaceae) 科の植物で、アイスプラントと同科に属します。Carpobroutus 属 には30種ほどがあり、その多くは南アフリカに生育してますが、C.glaucescens はオーストラリアの東海岸の砂丘に生育する匍匐性の多肉植物です。2mにも長く伸びます。ピンク・紫の色をしたデイジーのような花が咲きます。果実は長さ1.3cm, 幅1.6~4.4cmの赤紫の漿果(ショウカ:berry)で、その形からPigfaceとか Angular Pigfaceと呼ばれています。その味は塩辛いリンゴ、バナナ、イチゴ、キウイのようで、オーストラリアのアボジリニ原住民に好んで食されるそうです。この植物は庭園のグラウンドカバーとしても利用されます。なぜこの植物だけが塩分を多く含んだ果実をつけるのかは明らかではありません。
一般に果実が甘い味を持ったり、いい匂いを出したり、発色したりするのは果実の中にある種子を遠くへ運んでもらうために鳥や動物を誘う働きがあると言われています。つまり、繁殖の一手段です。そういう点からは塩分の高い果実には利点が見出せません。
しかし、果実の果肉には、例えば植物ホルモンのアブシシン酸のような物質が含まれていて、種子が環境条件の整わないうちに発芽を抑えるのに役立っていることもあります。推測ですが、C.glaucescens の場合は果肉に含まれる高い濃度の塩分が中の種子の発芽を抑えているのかもしれません。果実が地上に落ちて崩れると、塩分が溶け出して種子の発芽が可能になると云う仕組みです。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2018-12-24
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