質問者:
高校生
さゆり
登録番号4316
登録日:2018-12-25
陽樹の葉は、一枚の葉にある気孔の数を減らすため、小型であると生物の授業で習いました。しかし、一枚の葉の大きさが小さくなっても、全体の葉の数が増えると、同時に全体としての気孔の数が増えてしまって、無意味だと思いました。実際のところ、全体としての葉の大きさと気孔の数のバランスはとれているのでしょうか。自分がなぜ陽樹の葉は小型であるのかを考えたところ、もし葉が大型であると、葉と葉が重なる面積が大きくなり、太陽光の受け取りに非効率であり、小型であると、重なる面積が小さくなり、効率的であると考えました。その点についても考慮して、教えてください。
みんなのひろば
気孔と葉の大きさの関係について
さゆり さん
このコーナーをご利用いただきありがとうございます。ご質問には東京大学の寺島一郎先生から下記の回答文をいただきました。参考になさってください。
【寺島先生からの回答】
さゆりさんの質問にある1枚の葉の気孔の数は、「葉の面積」と「単位面積あたりの気孔の数」の積として表すことができます。面積あたりの気孔の数は、「表皮の細胞のうちどのくらいが気孔の孔辺細胞に分化するのか(気孔指数)」と「表皮の細胞の密度(単位面積あたりの細胞の数)」の積で表現できます。
同種の植物の陽葉と陰葉とを比べると、陽葉の方が小さいのが一般的です。一方、気孔指数は陽葉の方が陰葉よりも大きい傾向があります。細胞のサイズは陽葉の方が小さいので密度は大きくなります。したがって、「単位面積あたりの気孔の数は陽葉の方がかなり多い」と言えます。一枚の葉にある気孔の数は、葉の面積との兼ね合いとなりますので、一概には、「こうだ」と言えないでしょう。しかし、ここでやったように、分けて考える方が考えやすいでしょう?単位面積あたりの気孔の数が決まるメカニズムについては、登録番号0929と登録番号4048のQ/Aも参考にしてください。
単位面積当たりの光合成速度は、陽葉の方が陰葉よりも高いのが一般的です。光合成の原料となるCO2を供給しなければならないですから、気孔の数も多いのです。厳密に言えば、数ではなく、気孔が開いたときの開口面積の合計を気孔の穴の深さで割った値が大きくなければなりません。一方、暗いところにある陰葉にはそれほど強い光はあたらないので、単位面積あたりの光合成速度はそれほど高くなく、面積あたりの気孔の数も少なくてよいのです。それよりも葉を薄く拡げて光を集めた方が有利です。植物は、このような環境への馴化(順化)をかなりうまくやっています。
さゆりさんの葉の面積と光についての考察はなかなか優れています。太陽は点光源ではないので、物体の影には本影(暗い影)と半影(薄い影)とがあります。半径10 cmの円に太陽光が垂直に当たった場合、太陽の直径は角度にして0.5˚に相当しますから、本影がなくなるのは、
10/tan (0.25˚)=2291 cm
すなわち、葉からほぼ23 mの距離の場所ということになります。大きな葉が上にあるとその下は、本影で暗くなってしまいます。小さな葉にするとこの距離を短くすることができますよね。また、強い光があたると葉の温度が高くなりすぎることがあります。大きな葉には空気がまとわりつきやすく、熱がなかなか逃げません。蒸散によって蒸発熱が奪われる際にもこの空気のよどみが邪魔になってあまり冷却できません。さらに、外気のCO2もなかなか葉面に到達しにくいのです。強い光があたるところでは、小さい葉にしておかないと葉の温度がうんと高温になるし、光合成の効率も悪くなります。葉の大きさや葉のまわりの空気のよどみ(境界層)の問題については、登録番号4186や登録番号1616のQ/Aも参照してください。
このコーナーをご利用いただきありがとうございます。ご質問には東京大学の寺島一郎先生から下記の回答文をいただきました。参考になさってください。
【寺島先生からの回答】
さゆりさんの質問にある1枚の葉の気孔の数は、「葉の面積」と「単位面積あたりの気孔の数」の積として表すことができます。面積あたりの気孔の数は、「表皮の細胞のうちどのくらいが気孔の孔辺細胞に分化するのか(気孔指数)」と「表皮の細胞の密度(単位面積あたりの細胞の数)」の積で表現できます。
同種の植物の陽葉と陰葉とを比べると、陽葉の方が小さいのが一般的です。一方、気孔指数は陽葉の方が陰葉よりも大きい傾向があります。細胞のサイズは陽葉の方が小さいので密度は大きくなります。したがって、「単位面積あたりの気孔の数は陽葉の方がかなり多い」と言えます。一枚の葉にある気孔の数は、葉の面積との兼ね合いとなりますので、一概には、「こうだ」と言えないでしょう。しかし、ここでやったように、分けて考える方が考えやすいでしょう?単位面積あたりの気孔の数が決まるメカニズムについては、登録番号0929と登録番号4048のQ/Aも参考にしてください。
単位面積当たりの光合成速度は、陽葉の方が陰葉よりも高いのが一般的です。光合成の原料となるCO2を供給しなければならないですから、気孔の数も多いのです。厳密に言えば、数ではなく、気孔が開いたときの開口面積の合計を気孔の穴の深さで割った値が大きくなければなりません。一方、暗いところにある陰葉にはそれほど強い光はあたらないので、単位面積あたりの光合成速度はそれほど高くなく、面積あたりの気孔の数も少なくてよいのです。それよりも葉を薄く拡げて光を集めた方が有利です。植物は、このような環境への馴化(順化)をかなりうまくやっています。
さゆりさんの葉の面積と光についての考察はなかなか優れています。太陽は点光源ではないので、物体の影には本影(暗い影)と半影(薄い影)とがあります。半径10 cmの円に太陽光が垂直に当たった場合、太陽の直径は角度にして0.5˚に相当しますから、本影がなくなるのは、
10/tan (0.25˚)=2291 cm
すなわち、葉からほぼ23 mの距離の場所ということになります。大きな葉が上にあるとその下は、本影で暗くなってしまいます。小さな葉にするとこの距離を短くすることができますよね。また、強い光があたると葉の温度が高くなりすぎることがあります。大きな葉には空気がまとわりつきやすく、熱がなかなか逃げません。蒸散によって蒸発熱が奪われる際にもこの空気のよどみが邪魔になってあまり冷却できません。さらに、外気のCO2もなかなか葉面に到達しにくいのです。強い光があたるところでは、小さい葉にしておかないと葉の温度がうんと高温になるし、光合成の効率も悪くなります。葉の大きさや葉のまわりの空気のよどみ(境界層)の問題については、登録番号4186や登録番号1616のQ/Aも参照してください。
寺島 一郎(東京大学大学院理学研究科生物科学専攻)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2019-01-04
佐藤 公行
回答日:2019-01-04