一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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接ぎ木による結実までの期間短縮について

質問者:   会社員   ぷち
登録番号4317   登録日:2018-12-25
以前No4303で質問しましたが質問がうまく伝わっていないようだったのでもっと具体的に質問します。なお、当方は知りたい、気になるという気持ちで質問していますが、「技術的な質問なので回答できない」に当てはまるようでしたらそのむねをお願いします。
質問ですが例えば種から実がなるまで柚子は15年、レモンは10年、カラタチは5年とします。この3種を一緒に植え5年経ったとします。前回の回答では実が成るほど成熟した台木に高接ぎすれば短縮可能とありましたが、そうではなく上記の内容でカラタチと柚子の台木にレモンを通常の接ぎ木をした場合どうなるのでしょうか?この場合台木の年齢に関係なく接ぎ穂の成熟度依存になるのでしょうか?そして、高接ぎをした場合は年齢の若い穂木だったとしても台木に依存し早く結実するようになるのでしょうか?よろしくおねがいします。
ぷち様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
回答は、登録番号4303の質問に回答して下さいました野田口先生に、引き続いて回答して頂きました。

質問内容で、仮定の例として、カラタチにレモンを接ぎ木した場合と柚子にレモンを接ぎ木した場合をあげておられます。また、種子からの年数が5年ではカラタチは開花するが、柚子とレモンはどちらも開花しないと仮定しておられます。発芽から5年目に接ぎ木を行なった場合、柚子にレモンを接ぎ木した場合はどちらも開花するまで成育していない状態の樹木同志の接ぎ木ですから、結局問題は開花する状態のカラタチに、まだ開花する状態まで成育していないレモンを接ぎ木した場合どうなるのかという質問になるかと思います。回答は開花する状態の樹木を台木として、開花する状態にまで成育していない樹木を接ぎ木した場合についての回答になっています。

【野田口先生の回答】
ぷち様、再度のご質問ありがとうございます。以下、ご質問についてお答えいたします。

花をつける分子機構は植物によって異なりますので、一様の答えとはなりませんが、果樹などはじめての開花までに複数年を要する樹木の場合、開花が既に起きる状態の樹種と接木をしても、単純に開花が促進されない場合が多いです。高接ぎのように、接木によってわずかにその年数を短縮することは可能です。

植物が開花するかしないかは、先日の回答のように個体サイズの計測による機構が想定されており、開花によい季節が訪れても、個体サイズが小さければ開花してしまわないよう、花芽を形成する成長点で開花を抑制する遺伝子が働いています。接木をすることで、開花を促進するフロリゲンと呼ばれる花成ホルモンが伝達することが知られますが、このフロリゲンが開花する運命の樹種から開花しない運命の樹種に伝達されても、開花しない運命の樹種の成長点で開花を抑制する遺伝子が強く働いていれば、開花を促進することはできません。一方で、一年生の草本類などでは、こうした開花の強い抑制は芽生えてから比較的短期間で解除され、違う種類の植物と接木することによって本来の開花時期よりも前に開花を促進させることも可能であることが複数の植物を用いた研究で知られています。


野田口 理孝(名古屋大学大学院生命農学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2019-01-05