とるねこさま

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。　回答が遅くなりすみませんでした。回答は農研機構　生物機能利用研究部門 植物・微生物機能利用研究領域の今泉（安楽）温子先生にお願いいたしました。さらにご質問がある場合には質問コーナーへ新規質問として送ってください。


【今泉（安楽）先生のご回答】
植物の根は、土壌中の水分、栄養分を吸収する器官であると共に、土壌中の微生物と共生す る場でもあります。アーバスキュラー菌根菌(以下、菌根菌)は、植物の根の内部に共生し、 根の内部から根の周辺の土壌領域に菌糸を張り巡らせ、水分や、リンなどの土壌栄養を吸収 することで、植物の生育に貢献します(より詳細な解説は、登録番号2786 をご覧ください)。

ご質問いただいた菌根菌の菌糸の視認についてですが、 1.視認できるか否か 2.植物の根と菌糸を見分けることが可能かの 2 点についてお答えしたいと思います。

1.視認できるか否か
観察対象とする菌根菌の菌糸と宿主植物の根のサイズは、菌糸の直径:5 マイクロメートル前後(1 マイクロメートルは 1 ミリメートルの千分の一) 根の直径:1~数ミリメートル前後です。
一般的に、人間が肉眼で観察できる限界の長さ(分解能)は 0.1 ミリメートルと言われてい ます。菌糸の直径の 5 マイクロメートル=0.005 ミリメートルなので、菌糸を肉眼で確認す ることはできません。土から掘り起こした根は土で覆われており、目視での観察はさらに難 しくなります。ちなみに、人間の髪の毛の直径は 0.08 ミリメートル前後と言われています。 髪の毛と比べて考えると、菌根菌の菌糸の「細さ」を実感していただけると思います。

2.植物の根と見分けることが可能か 根の中に感染した菌根菌を観察するためには、5~10%水酸化カリウム水溶液に根を浸して、 根を透明化した後、菌糸を染める染色液(私は、酢酸+黒インク染色液(5%酢酸+5%黒イ ンク)を使用しています)での染色作業を行います。植物の根は染色されず透明のまま、菌 糸は青~黒色に染色されるので、実体顕微鏡、あるいは、光学顕微鏡で、根と菌糸を分けて 観察することができます。