一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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クロロフィルとアセトンの関係について

質問者:   高校生   いよ
登録番号4332   登録日:2019-01-10
私たちは高校の授業の一環の研究で、ブラックライトを当てると赤く光る紙を作りたいと考えています。そこで、クロロフィルにブラックライトを当てると赤く光ることを利用しました。

手順は、
ほうれん草を粉末状にし、アセトンを加えて濾過して、クロロフィルを抽出しました。その濾液に新しい濾紙を浸して、ブラックライトを当て、光を観察しました。

クロロフィルは有機溶媒で抽出できると聞いたので、アセトンを使用しました。

濾紙が濾液で湿っている状態では、濾紙は赤く光りました。しかし、濾紙が乾くにつれて、赤い光は消えていき、最終的に見えなくなりました。

また、濾液に直接ブラックライトを当てた場合も、赤く光りました。

濾紙が乾くと、光らなくなった理由を教えてほしいです。
いよ 様

このコーナーをご利用くださりありがとうございます。
クロロフィル分子は、単量体(モノマー)として溶媒中に存在するときには赤色の強い蛍光(吸収した光エネルギーの放出)を発します。アセトン溶液中ではクロロフィルは単量体で存在しますが、アセトンが揮発して失われるとクロロフィル分子は会合して蛍光が観測できなくなります。会合すると蛍光が見られなくなる理由としては、一般論として、(1)蛍光を発する度合い(蛍光の収率)が減る、(2)蛍光の寿命が速くなる、(3)蛍光の波長(色)が変化するなど、いろいろな場合が考えられます。会合とは別に、操作の過程でクロロフィルが変性して別の分子に変化してしまって赤色の蛍光が観測できなくなる場合もあり得ます。なお、クロロフィルを会合させる分子間の結合は共有結合ではないので、乾いた紙を再びアセトンに浸すと赤く光るようになると思います。クロロフィルを用いて紫外線で赤く光る乾いた紙を作るのは難しいかも知れません。キーワードは「モノマーの状態に保つ」だと思いますので、工夫をしてみてください。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-01-12