一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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サザンカとツバキの花粉媒介者はだれですか

質問者:   一般   malo
登録番号4347   登録日:2019-01-29
サザンカからツバキへ、花盛りが移りゆくこの頃、素人からの質問です。
 赤く大きな花弁は両者とも同じですが、ツバキの花はメジロなどによる鳥媒介花として、よく知られています。一方、サザンカについては、解説者によって鳥媒介と虫媒介とが混在します。大気の寒暖による「恒温の鳥と変温の虫」の生態、同じ離弁花でありながら「花弁構造の違い」など、媒介者を指定する理由が述べられます。実際はどうなのでしょうか。日常、人間に非常に近い植物のこと、教えてください。
malo 様

みんなのひろばの植物Q&Aのコーナーをご利用下さりありがとうございます。
私もネットで検索してみましたが、ご質問のように解説者によって、サザンカが虫媒花とするものと鳥媒花とするものが混在しておりました。この際専門家のご意見を伺うのが適当と考え、送粉の研究で顕著な業績を挙げられておられます酒井章子先生に回答を依頼しました。

【酒井先生の回答】
サザンカとツバキは、花の少ない寒い時期に大きな花を咲かせ、頼もしい樹木です。
これらが、何によって花粉を運んでもらうよう進化してきたのか、というのは気になるところですね。

ただ、植物と花粉を運ぶ動物の関係は、きっちり決まったものだというよりは、場所や状況、時期によって柔軟に変わりうると考えておいたほうがいいかもしれません。同じ種の植物でも、温かい年、寒い年、あるいは温かい場所、寒い場所、さらに、咲き始め、開花ピーク、咲き終わりによって、訪れる動物の種類が変わるというのは普通に見られることです。

日本でサザンカとツバキの花粉を誰が媒介しているのか、については、屋久島で鳥が主要な媒介者である、と報告している論文のほかは、学術誌等の文献は見つけることができませんでした。たしかに、サザンカとツバキの花形態の違いを昆虫と鳥、という花粉媒介者の違いで説明している記事はいくつかあるようですが、本当に花粉媒介者の選別に機能しているのかは検討の余地があるように思います。

厳密に、鳥と昆虫どちらが花粉媒介に重要なのか、をきっちり調べるには、手間のかかる実験が必要です。
しかし、ある場所、時期にそれを行ったとしても、他の場所や時期にも当てはまるとは限りません。
ツバキとサザンカの花粉媒介は、鳥という寒い時期にも訪れてくれる動物を当てにしつつ、昆虫も使えるなら使う、という植物のたくましさの現れであるのかもしれません。



酒井 章子(京都大学生態学研究センター)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2019-02-26
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