質問者:
公務員
yuki
登録番号4359
登録日:2019-02-28
一般に葉のクロロフィル含量を示す値にSPAD値を利用することが多いと思います。みんなのひろば
葉のSPAD値と見た目の葉色との関係
その場合SPAD値が高くなるにつれて、葉の色は濃くなる(見た目)と言えるのでしょうか。
経験的に同じ樹種において明らかに淡いと感じる葉がSPAD値では高くなることがあるような気がします。
よろしくお願いします
Yuki 様
この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。
結論としては、「ある条件下では、クロロフィル含量とSPAD値との間には強い相関関係があり、SPAD値の増加に伴って見た目の緑色も濃くなる」と言えますが、この関係が、違った生理状態の個体(葉)や違った種類の植物について、何時も成り立つわけではないと考えた方が良いでしょう。もし気になるようでしたら、標準的な方法でクロロフィルを実際に定量して比較されることをお勧めします。SPAD値は、ある条件下でクロロフィル含量に深く関係する数値ですが、クロロフィル含量を直接的に示す数値ではありません。
葉中のクロロフィル量を求めるには、試料に含まれる色素をアセトンなどの有機溶媒で完全に抽出して透明な溶媒に単量体の状態で溶解させ、特定波長の単色光に対する透過率の測定を基本に、既知の「モル吸光係数」に基づいて色素分子の濃度を算出することになります。この場合、ランベルト・ベールの法則により、「吸光度(光学密度または光学濃度)」と「クロロフィル濃度」の間に正比例の関係が成り立つので、吸光度からクロロフィル濃度が容易に求められます。ただし、実際には、測定システムその他の要因からの制約があるため、この関係が成り立つ濃度範囲は限られ、また、別の色素が液中に混在しているときにはそれなりの工夫が必要となります。
ところで、上述の標準的な方法では、測定に際して試料は失われることになります(破壊的な計測)。この欠点を避け、生きたままの植物の葉について短時間でクロロフィル含量を見積もるために考案されたのが「葉緑素計」と呼ばれる装置です。この装置で得られるSPAD(その名前の由来は、「Soil and Plant Analyzer Development」事業により開発された装置による)と呼ばれる値は、典型的な例では、クロロフィルが吸収する650nmあたりを発光中心波長とする赤色LEDからの光が吸収される度合いを示す数値です。なお、葉に入射する光は反射・散乱・吸収・(それ以外は透過)の何れかの運命をたどることになりますが、クロロフィル濃度に関係するのは吸収の部分だけなので、SPAD値の測定ではクロロフィル吸収のない940nmあたりで発光する赤外LED光を対照光として用いることにより反射と散乱の部分に関する補正がなされた形になっております。この測定条件下では、吸収による光の減少に寄与する度合いを示す数値(吸光度 = -log (透過率);ただし、650nmの波長幅の広い光について求められたもの)は、ある濃度範囲内ではクロロフィル含量と直線的な関係になります。ただし、生葉の測定では、透明な溶媒系の場合とは対照的に、葉の表面や内部の構造に起因する反射や散乱などが大きく効いてい来るので、この部分の大きさがSPAD値のクロロフィル濃度への対応付けを不安定にする要因になっている可能性が考えられます。
また一方、目で見る色合いは、クロロフィルの含量とは別に、葉に含まれるカロテノイドやアントシアニンなどの色素によっても左右されると思います。また、含まれる色素含量とは無関係に、葉の表面の形態学的な特徴によって色合いが大きく変わってくる場合もあり得るのではないでしょうか。
この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。
結論としては、「ある条件下では、クロロフィル含量とSPAD値との間には強い相関関係があり、SPAD値の増加に伴って見た目の緑色も濃くなる」と言えますが、この関係が、違った生理状態の個体(葉)や違った種類の植物について、何時も成り立つわけではないと考えた方が良いでしょう。もし気になるようでしたら、標準的な方法でクロロフィルを実際に定量して比較されることをお勧めします。SPAD値は、ある条件下でクロロフィル含量に深く関係する数値ですが、クロロフィル含量を直接的に示す数値ではありません。
葉中のクロロフィル量を求めるには、試料に含まれる色素をアセトンなどの有機溶媒で完全に抽出して透明な溶媒に単量体の状態で溶解させ、特定波長の単色光に対する透過率の測定を基本に、既知の「モル吸光係数」に基づいて色素分子の濃度を算出することになります。この場合、ランベルト・ベールの法則により、「吸光度(光学密度または光学濃度)」と「クロロフィル濃度」の間に正比例の関係が成り立つので、吸光度からクロロフィル濃度が容易に求められます。ただし、実際には、測定システムその他の要因からの制約があるため、この関係が成り立つ濃度範囲は限られ、また、別の色素が液中に混在しているときにはそれなりの工夫が必要となります。
ところで、上述の標準的な方法では、測定に際して試料は失われることになります(破壊的な計測)。この欠点を避け、生きたままの植物の葉について短時間でクロロフィル含量を見積もるために考案されたのが「葉緑素計」と呼ばれる装置です。この装置で得られるSPAD(その名前の由来は、「Soil and Plant Analyzer Development」事業により開発された装置による)と呼ばれる値は、典型的な例では、クロロフィルが吸収する650nmあたりを発光中心波長とする赤色LEDからの光が吸収される度合いを示す数値です。なお、葉に入射する光は反射・散乱・吸収・(それ以外は透過)の何れかの運命をたどることになりますが、クロロフィル濃度に関係するのは吸収の部分だけなので、SPAD値の測定ではクロロフィル吸収のない940nmあたりで発光する赤外LED光を対照光として用いることにより反射と散乱の部分に関する補正がなされた形になっております。この測定条件下では、吸収による光の減少に寄与する度合いを示す数値(吸光度 = -log (透過率);ただし、650nmの波長幅の広い光について求められたもの)は、ある濃度範囲内ではクロロフィル含量と直線的な関係になります。ただし、生葉の測定では、透明な溶媒系の場合とは対照的に、葉の表面や内部の構造に起因する反射や散乱などが大きく効いてい来るので、この部分の大きさがSPAD値のクロロフィル濃度への対応付けを不安定にする要因になっている可能性が考えられます。
また一方、目で見る色合いは、クロロフィルの含量とは別に、葉に含まれるカロテノイドやアントシアニンなどの色素によっても左右されると思います。また、含まれる色素含量とは無関係に、葉の表面の形態学的な特徴によって色合いが大きく変わってくる場合もあり得るのではないでしょうか。
佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-03-16