一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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葉緑体のチラコイドの構造

質問者:   大学生   H.I.
登録番号4361   登録日:2019-03-03
参考書の葉緑体のイラストを見てふと思い立ったのですが、教科書や図説では葉緑体の断面のイラストが説明に用いられ、外膜、内膜、チラコイド膜が繋がっていないような、一見3重の膜構造を持つように描かれています。
ミトコンドリアの構造(同じ原核細胞由来ですが外膜と内膜の間、つまり元々原核細胞外だった部分がH+高い)や細胞内のpH(H+が濃い領域は安定な液性である細胞質基質ではなく細胞外や細胞外と同等な小胞内だと考えられる)、ATP合成酵素の向きなどで比較するとチラコイド膜内の組成は葉緑体の外膜と内膜の間の空間(ミトコンドリアの膜間腔のような空間)由来と考えられ、チラコイド膜は
①(あたかもミトコンドリアのくびれた内膜のように)葉緑体の内膜がくびれた構造でたまたま断面によっては内膜と切り離されているように見えるだけ
あるいは②内膜がくびれて出来たストロマ内に浮かぶ膜小胞の様相を呈しており実際に葉緑体は3重の膜構造となっている
のどちらかだと考えました。
②ならよく教科書や図説で用いられるイラストは適切だと考えられますが①だと不適切だと考えられます。
教科書や図説ではチラコイドと内膜の接続については明記されていないのでなぜそのようなイラストが描かれがちなのか真相が分からず質問した次第です。
よろしくお願いします。
H.I 様

この質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。
葉緑体包膜の内膜がくびれ込んでチラコイド膜が形成される事実を示すと思われる場面が観察されることはなく、一方、化学的な構成と機能において両方の膜は大きく異なっていることが知られています。例えば、内膜にはATP依存型タンパク質輸送モーター複合体のような輸送体が局在し、チラコイド膜にはクロロフィルタンパク質複合体などの光合成機能タンパク質が局在しています。光合成電子伝達反応の進行に伴って形成されるプロトン濃度勾配はチラコイド内腔が酸性化される方向であるのはご存知のとおりです。以上から、教科書や図説で描かれている模式図は現段階で一般に信じられている通説に一致するものであると言えます。なお、葉緑体の外包膜と内包膜の起源に関するQ/Aが本コーナーに掲載されていますので、ご参照ください(登録番号3632)。


佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-03-12
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