一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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CAM型植物を育てる際の光周期に関して

質問者:   大学生   草
登録番号4365   登録日:2019-03-14
最近、コダカラベンケイ(Kalanchoe daigremontiana)を育て始めました。

現在は室内で20-22℃、卓上蛍光灯下で育てているのですが、この蛍光灯による光照射について疑問に思いましたので質問させていただきました。

CAM型光合成を行う植物の場合、一般に二酸化炭素の固定は夜間に行うものと理解しています。

室内栽培の場合、蛍光灯の光は太陽光よりも弱いと思うのですが、このような場合でも光照射は24時間連続ではなく、明期と暗期を明確に分けたほうが良いのでしょうか。

差し障りなければご回答の方よろしくお願いいたします。
草 様

質問コーナーをご利用くださりありがとうございます。
教科書には、「CAM植物は昼間には気孔を閉じ、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込む」と、書かれていることがあります。もしそのとおりだとした場合、昼や夜の到来がどのような仕組みでCAM植物によって感知されているかが問題になります。CAM型光合成は乾燥に適応した代謝系てあると言われますので、湿度の変化が重要な因子であると予想するとはできますが、昼から夜、そして夜から昼へと移行するリズム変化の過度期においては、自然界では先ずは外部環境としての光・湿度・温度・二酸化炭素濃度などの因子が大きく変動し、これに伴って植物の内部環境にも大きな変化が生じます。コダカラベンケイの場合、内外のどのような因子がシグナルとして感知され、気孔開閉などの応答につながるのかは興味のあるところです。

ところで、貴方の観察では、蛍光灯からの光の連続照射下でもコダカラベンケイが育つとのこと、また、私の文献調査でも、閉鎖型植物工場での連続光利用に主眼をおいた解析で、コダカラベンケイは連続照射への耐性が特別に低い部類に属する植物ではないとの記述(論文)が見つかりました。しかし、何れの場合にも光の強さと湿度に問題であるように思えます。多肉植物でCAM特性が強いコダカラベンケイは、比較的には光に強い植物でしょうから、卓上蛍光灯からの光は余りにも弱いために光照射下でも気孔は完全には閉じておらず、二酸化炭素を取り込んで細々と光合成的に生長しているものと思われます。生長をさらに促進するにはもっと強い光にさらすことが勧められますが、その場合、湿度条件によっては明期と暗期を分けて与えることが問題になるかも知れません。ご自分で異なる条件で育てる試みをしてみられては如何でしょうか。
なお、質問文のタイトルには「光周性」との記述がありますが、いわゆる日長条件(短日条件・長日条件)によって不定芽を作る無性生殖から花を咲かせる有性生殖への転換に関係する明暗周期の変動の問題は、ご質問の主旨とは異なっているものと理解します。
以上、簡単ですが、回答とさせていただきます。



佐藤 公行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-03-26
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