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ひまわりなどの種子の休眠について

質問者:   会社員   へちま
登録番号4388   登録日:2019-04-08
種子の休眠について調べていたところ、ヒマワリの種子などは種皮に発芽抑制物質が含まれるため、種皮が取り除かれるかもしくは発芽抑制物質が流れ出すまで発芽しないとありました。

種皮の硬さや、水分・酸素の透過性は考えず、発芽できない要因が植物ホルモンによる休眠だった場合に、
胚に存在する植物ホルモンのせいで休眠するのは理解できるのですが、なぜ成長する必要のないはずの種皮に発芽抑制物質があると発芽できないのでしょうか?
水分が種皮を通ってくる際に発芽抑制物質を胚に吸収させてしまうためでしょうか?

へちま様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。
休眠のメカニズムは多種多様ですが、植物ホルモンに限ってということですので、他のことは考慮に入れないでお答えします。それでも、植物ホルモンから論じる休眠/発芽の図式はそれほど単純ではありません。教科書的に一般化してしまえば、休眠/発芽は発芽を抑制する(胚の成長を抑える)物質、例えばアブシシン酸(ABA)と、発芽を促進する(胚の成長を進める)物質、例えば、ジベレリンとのバランスの問題ということになるでしょう。ところで、ヒマワリの種子の休眠ですが、必ずしも種皮に含まれる発芽抑制物質だけが、休眠の要因になっているとは限らないようです。
少し旧い研究(*)によると、採種直後の種子は適温(25℃前後)でも発芽は良くない。25℃〜40℃の範囲では全く発芽できないが、これは種皮が原因で、25℃以下の条件では発芽は悪くこれは胚自体に休眠原因がある。また、5℃〜40℃での乾燥貯蔵はどちらの温度条件での発芽も促進されるということです。
なお、この研究ではエチレンが発芽促進に重要に関わっているとも言っています。別の報告では、発芽抑制物質(ABA)は胚にも含まれています。しかし、ここではご質問の要点である「なぜ成長に関係のない種皮にある阻害物質が、胚の成長を抑えるのか」ということだけに絞って考えてみます。残念ながら、ヒマワリを材料にしたそういう観点からの研究報告は見当たりませんでした。ヒマワリの種子は痩果と呼ばれ、他のキク科植物にも見られるように、種皮と呼ばれているものは種皮と果皮とが合体したものです。一番外側は果皮に相当します。ABAを主とする発芽抑制物質それ自体は植物体のあちこちで合成され得ますが、種子胚の休眠に関わる場合は果実の中で合成されるのが普通だと考えていいでしょう。ヒマワリの種子では実際にどの部分で合成されて、どこに蓄積されるのかはわかりませんでしたが、胚が完熟し、果実が乾燥していくに従って合成された抑制物質は果皮の部分に残されるのかもしれません。乾燥した種子が吸水して果皮を含めた種皮全体の組織が柔らかくなると、これらの物質は浸潤して内部の胚に移動することは可能です。
他方、現在植物科学の研究で汎用されている、セイヨウシロイヌナズナ(アラビドプシス)の休眠性種子(痩果ではない)を使った実験が(**)がありますが、この場合は種子が吸水すると種皮の内側にある胚乳の細胞層で盛んにABAが新しく合成され、それが遊離して胚の成長(発芽)を抑えることが報告されています。種皮に存在する発芽抑制物質によって胚の成長がコントロールされている場合は、その抑制物質の濃度が低くなっていくに従って、胚の成長は盛んになります。濃度の減少は洗い出されるか、分解されるかの両方があります。なお、胚の成長の促進にはジベレリンのような成長促進ホルモンの存在も必要です。

 *F.Corbineau et al.(1990) Israel Journal of Botany 39:313-325.
**Keun Pyo Lee et al. ( 2010) Proc. Natl. Aca. Sci. USA 107:19108-19113.

勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-04-19
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