一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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白いスミレ

質問者:   会社員   きー
登録番号4394   登録日:2019-04-11
野生のスミレに関しての質問です。
10年ほど前から長崎県北部のある小高い山の中腹にタチツボスミレのまばらな群生を見つけ、毎年定点観察をしています。その群生の範囲は森と舗装された山道ののり面に幅4~5m、高さ1~2mで広がっています。その一角だけ(ほんの30cm四方)花弁、距ともに真っ白な個体(シロバナタチツボスミレと思われます)が毎年出現します。
種を採り、土もそこの土を掘って持ち帰り、自宅で育てましたが、花は白くなりませんでした。どういう理由が考えられるのでしょうか?お答えいただければ幸いです。
きー さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は東京大学の邑田 仁先生に回答をお願いいたしました。

【邑田先生のお答え】
質問の要点は、白花個体の種子を採取し、親株と同じ条件で育てたが白花が出なかった、ということだと思います。
観察によると白花個体そのものは遺伝的に固定しているようですが、白花の性質が遺伝的に劣性だとすると、通常個体と交配して出来た種子からは白花が出ない可能性が高いと考えられます。白花個体が自家受粉するか、着色個体(タチツボスミレ)がすでに白花とのヘテロ(雑種)であった場合に作られた種子からは白花純系が出る可能性はあります。
いずれにしても、この議論は白花が劣性ホモだという前提に立っていますので、交配による検証が必要ですね。

少しばかり補足しておきます。スミレの花には通常の花(開放花)と蕾が開かない閉鎖花とがあります。開放花は送粉昆虫によって他の花の花粉をも受粉する可能性があります、閉鎖花は自家受粉だけです。どちらも種子を作ります。もう一点は白い花は色素(スミレ属ではアントシアニン)が形成されないためですから遺伝形質としては劣性です。ご質問によればシロバナタチツボスミレの周辺にはタチツボスミレの集団があるとのことですので、その花粉がシロバナタチツボスミレの開放花に付着する可能性は十分に高いはずです。この場合には白花個体に出来た種子はすでにヘテロになっていますから着色した花が咲くことになります。

邑田 仁(東京大学理学部付属植物園)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2019-04-24
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