質問者:
高校生
きのこ
登録番号4407
登録日:2019-04-28
こんにちは、アレロパシーの実験をしようと思っているのですがアレロパシーは簡単に雑草の抑制など他感作用があると思います。しかし最近植物自らの成長の向上効果もアレロパシーに含まれると知りました。これは本当ですか?ネットの情報なので確かではないですが研究に使いたいと思っています。回答よろしくお願いします。
みんなのひろば
アレロパシーについて
きのこさん
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。アレロパシーの実験を考えているとのことですが、本質問コーナーでも同じテーマについての質問が過去になされていますので、すでにご覧になっているかと思います。Web 上でも「アレロパシー」で検索すれば幾つかの専門家による解説や、総説論文が読めます。(*)
アレロパシー(Alleopathy) という言葉はもともとハンス・モーリッシュ(Hans Mokisch:東北帝国大学で植物生理学の教授をしていたオーストリアの学者)が1937年に提唱した用語で、「植物あるいは微生物が生産放出する物質が、他の生物に何らかの影響を及ぼす現象」を意味します。日本では「他感作用」と訳されています。その後、研究者によって、アレロパシーはその抑制、阻害作用が特に注目されたり、最近では植物だけでなく昆虫、動物とのかかわりでも使われたりする場合があります。しかし、一般的には植物が何かの物質を生産し、それが根系を通して土壌に拡散したり、葉から揮発性の物質が放出されたりして、周辺の生物に負の影響を与える現象が対象となっている場合が多く、またその原因となる物質(アレロケミカル)も植物の種類に応じて沢山同定されています。植物がアレロケミカルを出すのは、いわば身を守るためであって、害虫や病原菌などを防除したり、栄養を独占するために他の植物を寄せ付けないようにするためなので、自分にとってみれば間接的に成長を促進していることになります。質問の中の「最近植物自らの成長の向上効果」と書かれているのは、具体的にどういう現象を指すのかわかりませんが、自分が何かの物質を作ってわざわざ体外へ放出し、それでもって直接自分の成長の促進を調節しているということはないでしょう。ただし、マメ科の植物が根粒菌の共生を促すために、何かの物質を出している場合はアレロパシーの正の影響の例であると言えるかもしれません。
あるいは、最近作物栽培や園芸でよく取り上げられるようになった「コンパニオン・プランツ」のことも考えられます。昔から、虫害や病害を避けるために「混植」と言って異なった作物を混在させて育てることがなされていました。どれでも良いというわけではなくて、特定の植物の組み合わせが必要です。コンパニオンプランツの組み合わせは、双方がお互いにメリットを得ているというよりは、どちらか一方の植物が助けられている場合がほとんどです。しかし、中には双方が得をする場合も知られています。アブラナ科の野菜、例えばキャベツやブロッコリをキク科のレタスと一緒に植えると、食害をもたらすモンシロチョウやヨトウガを遠ざけることができるし、逆に、レタスの害虫であるタバコガはアブラナ科が遠ざけます。コンパニオンプランツとして紹介されている例はたくさんありますが、実験的に証明されたものは少ないです。
アレロパシーは化学物質を使って行われるコミュニケーション(ケミカル・コミュニケーション)ということができます。コンパニオン・プランツについてもweb上で多くの情報が得られますが、科学的な研究の紹介というよりは実践的な報告が多いようです。
* 例えば 農業環境技術研究所・化学生態ユニットの 藤井義晴氏の総説「植物のアレロパシー 化学と生物28(7号)」や研修テキスト「アレロパシー研究の最前線」などは参考になるでしょう。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。アレロパシーの実験を考えているとのことですが、本質問コーナーでも同じテーマについての質問が過去になされていますので、すでにご覧になっているかと思います。Web 上でも「アレロパシー」で検索すれば幾つかの専門家による解説や、総説論文が読めます。(*)
アレロパシー(Alleopathy) という言葉はもともとハンス・モーリッシュ(Hans Mokisch:東北帝国大学で植物生理学の教授をしていたオーストリアの学者)が1937年に提唱した用語で、「植物あるいは微生物が生産放出する物質が、他の生物に何らかの影響を及ぼす現象」を意味します。日本では「他感作用」と訳されています。その後、研究者によって、アレロパシーはその抑制、阻害作用が特に注目されたり、最近では植物だけでなく昆虫、動物とのかかわりでも使われたりする場合があります。しかし、一般的には植物が何かの物質を生産し、それが根系を通して土壌に拡散したり、葉から揮発性の物質が放出されたりして、周辺の生物に負の影響を与える現象が対象となっている場合が多く、またその原因となる物質(アレロケミカル)も植物の種類に応じて沢山同定されています。植物がアレロケミカルを出すのは、いわば身を守るためであって、害虫や病原菌などを防除したり、栄養を独占するために他の植物を寄せ付けないようにするためなので、自分にとってみれば間接的に成長を促進していることになります。質問の中の「最近植物自らの成長の向上効果」と書かれているのは、具体的にどういう現象を指すのかわかりませんが、自分が何かの物質を作ってわざわざ体外へ放出し、それでもって直接自分の成長の促進を調節しているということはないでしょう。ただし、マメ科の植物が根粒菌の共生を促すために、何かの物質を出している場合はアレロパシーの正の影響の例であると言えるかもしれません。
あるいは、最近作物栽培や園芸でよく取り上げられるようになった「コンパニオン・プランツ」のことも考えられます。昔から、虫害や病害を避けるために「混植」と言って異なった作物を混在させて育てることがなされていました。どれでも良いというわけではなくて、特定の植物の組み合わせが必要です。コンパニオンプランツの組み合わせは、双方がお互いにメリットを得ているというよりは、どちらか一方の植物が助けられている場合がほとんどです。しかし、中には双方が得をする場合も知られています。アブラナ科の野菜、例えばキャベツやブロッコリをキク科のレタスと一緒に植えると、食害をもたらすモンシロチョウやヨトウガを遠ざけることができるし、逆に、レタスの害虫であるタバコガはアブラナ科が遠ざけます。コンパニオンプランツとして紹介されている例はたくさんありますが、実験的に証明されたものは少ないです。
アレロパシーは化学物質を使って行われるコミュニケーション(ケミカル・コミュニケーション)ということができます。コンパニオン・プランツについてもweb上で多くの情報が得られますが、科学的な研究の紹介というよりは実践的な報告が多いようです。
* 例えば 農業環境技術研究所・化学生態ユニットの 藤井義晴氏の総説「植物のアレロパシー 化学と生物28(7号)」や研修テキスト「アレロパシー研究の最前線」などは参考になるでしょう。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-05-07