質問者:
一般
ドリー
登録番号4424
登録日:2019-05-15
動物も植物も、基本的には同じDNAでコントロールされていると教わりました。しかし、植物は動物の様な脳や神経や血液を持っておらず、また足がないので移動もできないのに、暑さや寒さや乾燥に耐え、時期が来れば花を咲かせて実をつけるなど非常に賢く生きていると思います。動物と植物の違い
植物には動物と異なる仕組みがあるのでしょうか。植物の体内ではDNAの情報をどの様に伝えているのでしょうか。例えば、植物には植物ホルモンがあり、植物の生長に重要な役割を果たしていると聞きましたが、これは人のホルモンと同じでしょうか。また、ホルモン以外にも情報を伝える物質があるのでしょうか。
無理に比較して見当違いの質問をしているかも知れませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
なお先回、ダイズの子実が太る仕組みについて、非常に詳しく教えて頂いた大山先生に、お礼を申し上げます。
ドリー様
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。はてさて、「動物と植物の違い」について説明をということですが、とても大きなテーマですね。一冊の本が書けます。ここではそんなに詳しくまた多岐にわたって解説することはできませんので、基本的なことと、ご質問にある具体的な事柄に絞って答えることにいたします。
なお、次の本が入手できたら読んでみてみてください。『動物と植物はどこが違うか』高橋英一著、のぎへんのほん、研成社、1990年(2版)/その後改訂版があるかもしれません。
すべての生物は細菌からヒトまで、その発生から死までの一生は遺伝子(DNA)にプログラムされた情報に基づいて進行します。つまり基本となる生命のメカニズム(仕組み)は共通です。遺伝子の情報にはすべての生物に共通なものもありますが、進化するに従って多岐に分かれてきています。その違いにより単細胞生物、多細胞生物そして後者は動物、菌類(カビなど)、植物などのグループが派生してきました。「系統樹」という項目でネット検索してみてください。これらの関係がわかるでしょう。遺伝子の違いは形態や生理機能に違いをもたらしますが、遺伝子が働くメカニズムは基本的には同じです。動物と植物との一番大きな違いと言えるのは、もちろん例外もありますが、まず移動できないこと。そのために植物はどんなに環境が変化しても同じ場所で一生を過ごさなければなりません。そこで、植物には環境の刺激に対する様々な対応手段が備わっています(例えば、『植物は感じて生きている』瀧澤美奈子著、日本植物生理学会監修(植物まるかじり叢書)、化学同人を読んでください)。次に、独立(自家)栄養である。つまり、光合成という水と二酸化炭素(CO2)とから光エネルギーを使って有機物を合成することができる。動物はできないので、彼らのエネルギー源はすべて植物(微生物も一部あります。)に依存しなければなりません。三つ目に、体を作っている細胞の違いです。動物も植物も細胞の基本的構造は同じですが、植物には光合成を行う葉緑体という細胞内構造が(主として葉に)存在します。さらに、植物には骨格のような体を機械的に支持できる仕組みがありませんので、個々の細胞は細胞膜の外側に細胞壁という構造を持っています。細胞壁は主としてセルロースなどの炭水化物の繊維から作られています(登録番号4171をごらんください)。植物ホルモンの働き方は、基本的には遺伝子発現に関係しますが、生理機能の調節因子として作用する場合もあります。働き方は動物でも変わりありません。ホルモンの化学構造や合成メカニズムなどは動物と異なります。動物ではそれぞれの腺という器官で合成され、血管に分泌されるのが普通ですが、植物にはそのような特定の合成器官はありません。動物にはインシュリンのようなタンパク質のホルモンもありますが、植物のホルモンは低分子化合物です。ホルモンのような働きをする低分子の物質はいくつか発見されています。
以上概略を説明しました。上記に挙げた参考資料などを読んで、疑問が出てきましたらまた本コーナーをお訪ねください。
質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。はてさて、「動物と植物の違い」について説明をということですが、とても大きなテーマですね。一冊の本が書けます。ここではそんなに詳しくまた多岐にわたって解説することはできませんので、基本的なことと、ご質問にある具体的な事柄に絞って答えることにいたします。
なお、次の本が入手できたら読んでみてみてください。『動物と植物はどこが違うか』高橋英一著、のぎへんのほん、研成社、1990年(2版)/その後改訂版があるかもしれません。
すべての生物は細菌からヒトまで、その発生から死までの一生は遺伝子(DNA)にプログラムされた情報に基づいて進行します。つまり基本となる生命のメカニズム(仕組み)は共通です。遺伝子の情報にはすべての生物に共通なものもありますが、進化するに従って多岐に分かれてきています。その違いにより単細胞生物、多細胞生物そして後者は動物、菌類(カビなど)、植物などのグループが派生してきました。「系統樹」という項目でネット検索してみてください。これらの関係がわかるでしょう。遺伝子の違いは形態や生理機能に違いをもたらしますが、遺伝子が働くメカニズムは基本的には同じです。動物と植物との一番大きな違いと言えるのは、もちろん例外もありますが、まず移動できないこと。そのために植物はどんなに環境が変化しても同じ場所で一生を過ごさなければなりません。そこで、植物には環境の刺激に対する様々な対応手段が備わっています(例えば、『植物は感じて生きている』瀧澤美奈子著、日本植物生理学会監修(植物まるかじり叢書)、化学同人を読んでください)。次に、独立(自家)栄養である。つまり、光合成という水と二酸化炭素(CO2)とから光エネルギーを使って有機物を合成することができる。動物はできないので、彼らのエネルギー源はすべて植物(微生物も一部あります。)に依存しなければなりません。三つ目に、体を作っている細胞の違いです。動物も植物も細胞の基本的構造は同じですが、植物には光合成を行う葉緑体という細胞内構造が(主として葉に)存在します。さらに、植物には骨格のような体を機械的に支持できる仕組みがありませんので、個々の細胞は細胞膜の外側に細胞壁という構造を持っています。細胞壁は主としてセルロースなどの炭水化物の繊維から作られています(登録番号4171をごらんください)。植物ホルモンの働き方は、基本的には遺伝子発現に関係しますが、生理機能の調節因子として作用する場合もあります。働き方は動物でも変わりありません。ホルモンの化学構造や合成メカニズムなどは動物と異なります。動物ではそれぞれの腺という器官で合成され、血管に分泌されるのが普通ですが、植物にはそのような特定の合成器官はありません。動物にはインシュリンのようなタンパク質のホルモンもありますが、植物のホルモンは低分子化合物です。ホルモンのような働きをする低分子の物質はいくつか発見されています。
以上概略を説明しました。上記に挙げた参考資料などを読んで、疑問が出てきましたらまた本コーナーをお訪ねください。
勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-05-19