一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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カルスと幹細胞の違い

質問者:   高校生   みー
登録番号4438   登録日:2019-06-05
今日、授業でカルスについて知りました。
授業では未分化の細胞の集まりだと聞いたのですが、これはカルスそのものが幹細胞の集合体と言うことなのでしょうか?それともカルスの中に幹細胞が含まれているのでしょうか?
カルスの中身(構成してるもの)もよく分かりませんでした。
カルスを植物の幹細胞だと考えても良いのか、よろしくお願いします。
みー さん、

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。学校でカルスのことを学んだということですが、カルスのでき方などについては説明はなかったのですか。確かにカルスは未分化の細胞の塊で、条件が揃うと再分化を始めます。つまり分化の能力があるということです。その点ではカルスと幹細胞はよく似ています。しかし、両者には大きな違いがあります。
幹細胞は植物体の分裂組織(茎頂分裂組織や根端分裂組織など)に存在し、植物個体が生きている間、絶えず分裂を繰り返してそれ自体増殖し、また組織や器官へ分化が予定される細胞を作り出しています。だから、植物の幹細胞は植物の成長にとって必要なものです。他方カルスは植物の体を構成している組織(体細胞)が傷ついて、それを治癒するために、一時的な生体反応として作られます。つまり癒傷(ゆしょう)組織です。分化していない細胞の塊となるため、この現象を「脱分化」と言っています。カルスはまた幹細胞と違って一旦分化した細胞からできているため、遺伝的に均質性があるかどうかはわかりません。しかし、カルス細胞は培養の条件によって胚を再分化します。つまり一時的にも胚性幹細胞のようなものができて、そこから胚、個体へと発達していくのですから、カルス細胞は幹細胞に似ていると言えます。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-06-10
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