一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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クローバーの葉

質問者:   教員   かつひさ
登録番号4448   登録日:2019-06-21
三つ葉のクローバーですが、3枚のうち1枚だけが赤色です。
クロロフィルの欠乏かもしれませんが、裏面から見るとうっすらと緑色をしている部分もあります。
遺伝的な原因かと思いますが、御教示頂ければと存じます。
かつひさ様

植物Q&A のコーナーを利用下さりありがとうございます。
クローバーの葉が赤色を呈したということですが、クローバーはマメ科植物ですので、赤色色素はおそらくアントシアニンだろうと思われます。以後、赤色色素はアントシアニンとして回答致します。

通常緑色である葉が赤色になるということは、アントシアニンが蓄積したことによる場合、葉緑体の発達不全、クロロフィルの合成阻害や分解促進によりすでに存在していたアントシアニンの色が顕在化した場合、アントシアニンの蓄積と葉緑体の発達不全やクロロフィルの分解の両者が同時に起きた場合などが考えられます。また、その原因としては、遺伝子の変異によってもたらされる場合と環境要因による場合が考えられます。               
まず遺伝子の変異による可能性を考えます。ご質問ではクローバーの小葉3枚のうち1枚が赤色とのことですが、株全体、どの葉でも1枚が赤色なのでしょうか?それとも、たまたま1枚の葉の小葉が赤色だったのでしょうか?前者の場合ですと遺伝的な性質と思われますが、後者の場合はたまたま小葉を形成する原基の細胞に変異が入ったものではないかという可能性が考えられます。どのような変異かは、やや暗色の赤ならアントシアニンの蓄積に関する変異で、透明感のある赤なら葉緑体の発達あるいはクロロフィル合成の抑制に関わる変異によることが推定できるでしょう。部分的に緑ということですから、斑入りのような変異が入っているのかもしれません。
次に環境要因による場合ですが、無機栄養の欠乏、過剰、アンバランスや高温、低温などの温度ストレス、病害などでアントシアニンの蓄積が起きます。また、光合成、とくにCO2、固定反応が低下する要因下ではアントシアニンの合成、誘導が促進されます(植物Q&A登録番号1903)。ご質問の場合、同じ環境下におかれている状態で、1枚の小葉だけが赤色を呈するわけですから、環境要因によるとは考えにくいと思われます。考えられるものとしたら病害によるものでしょう。

いろいろ可能性を考えてみましたが、一般的に広く知られ、調べられている現象ではありませんので、考えた可能性を検証しないと結論はだせません。なお、個体レベルの質問ですが、同様な事例は登録番号4442にあります。似通った回答になってしまっていますが、ご覧になって下さい。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-06-24
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