一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ブドウの蔓と成長

質問者:   一般   masao
登録番号4450   登録日:2019-06-24
私はベランダに鉢を置いて、ブドウを種から育てています。今年で3年目になりますが、全長2mほど、高さは60cmくらいになり、支柱も高いものに取り換えようとしていたときに、蔓がベランダの手すりや、他の樹木に巻き付くようになったため、切ってしまいました。すると、そこからもう蔓が出なくなり、葉も若干枯れ気味に見えます。
ブドウは、蔓を切ってしまうとその影響で成長を止めたり、また枯れてしまうことがあるのでしょうか。また、その場合には回復の見込みはないのでしょうか。せっかく育てたブドウなので、なんとか助けてあげたいのですが。
よろしくお願いいたします。
Masao さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
園芸技術上の個別的なご質問で、お答えするのが難しいものですが、園芸学ご専攻の名古屋大学 白武勝裕先生に伺いました。先生は「詳しい状況がよく分かりませんが、恐らく、鉢植えの若木を、今の時期(夏期)にズバッと強剪定したように思います。このような状況(鉢植え、若木、夏期の強剪定)は農業現場では起こらないことなので、ある程度の推定込み」との前提でお答えを寄せられました。

【白武先生のお答え】
せっかく育てたブドウの樹の元気がなくなってしまったようで悲しいですね。夏期に行う夏期剪定というものもありますが、一般的に落葉果樹の剪定は冬期に行います。
ベランダの手すりや他の樹木に巻き付いた蔓を切られたとのことから推定すると、今回ご質問の剪定をされたのは6月頃でしょうか? かなり強めの剪定(強剪定)をされたように思われます。鉢植えの若木を夏期に強剪定することは一般ではないので、推測になりますが、次のように考えられます。
ブドウは春に萌芽して、しばらくは旺盛に新しい枝(新梢)が伸びていきますが、6~7月に成長を停止します。この新梢に着いた芽は、翌年の春に萌芽するための芽で休眠状態にあり、そのままでは萌芽しません。剪定の刺激により萌芽することもありますが、農業上、夏期剪定をした後に萌芽させるために、シアナミドなどの休眠打破剤を処理します。Masao さんのブドウの蔓の芽も恐らく休眠状態にあるため、萌芽しないのだと思います。シアナミド処理をする手もありますが、一般には手に入りにくい薬剤なので、翌春の萌芽を待つしかないかもしれません。何かの刺激により萌芽することもあるので、萌芽を待ってみてはいかがでしょうか。葉も萎れ気味とのことですが、ブドウの枝(蔓)はダメージを受けやすく、すぐ枯れ込んでしまう傾向があるので、剪定によるダメージだと思います。
このように、ブドウの枝はダメージを受けやすく、すぐ枯れ込んでしまうので、冬期剪定の時も注意してください。特に若木のうちは枯れ込みやすいので、強剪定をしないとか、寒さや乾燥で枝が枯れ込むことを防ぐために、冬の初めに剪定するのではなく、寒さが峠を越えた冬の終わりに剪定するなど、注意をしてください。
本題とはズレますが、このブドウの樹は種から育てていらっしゃるとのこと。果樹の品種は遺伝的に固定されていないので、ある品種から採った種子を播いても親品種とは違う性質になります。親品種より美味しい実を着けるのか?楽しみですね。



白武 勝裕(名古屋大学 大学院生命農学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2019-07-03
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