一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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朝顔の脇芽について

質問者:   一般   あつまま
登録番号4462   登録日:2019-07-05
小学生の子どもを持つ母です。
学校で育てている朝顔について質問され困っております。基本的な事かと思いますが是非お教えいただけると幸いです。

本葉が8枚程度育った時に一度摘芯しました。その後根元から脇芽が2個育ち、初めに成長していた茎からも2本脇芽が出ました。現在一本の脇芽は蔓として伸び4枚葉が付いています。
ただ、現在葉の根元にあるのは脇芽ではなく全て花芽です。

質問になりますが、何故全て花芽になったと思われますか。また、花芽が出たところからは脇芽は出ないようですが、そうなると今あるつぼみが咲いた後の蔓等の成長は難しいのでしょうか。
もう一点、過去の質問を調べたところ「1357」の回答で「フロリゲン」の影響で脇芽は花芽に変化するようですが、同時に種まきした別の苗は蔓に成長しています。ある程度同じ条件なので何故でしょうか。疑問らしいです。
子どもには大雑把に「個体差」的な回答をしましたが納得できないようです。先生に聞いてみても「図鑑とか調べて」と言われたようです。

よろしくお願いします。
あつまま さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ご質問は、長年、ご自身の研究材料としてアサガオを用いられてこられた基礎生物研究所の星野 敦先生にお願いし、次のようなお答えを頂きました。


【星野 敦先生のお答え】
あつまま さま:
 脇芽は学術的に腋芽(えきが)といいますが、それに関連していただいた3つの質問について順番にお答えします。
 まず、摘心したあとに腋芽から伸びてきた茎(アサガオの場合、子蔓といいます)の葉の基部(根元)に腋芽ではなく花芽が付いた理由ですが、調べていただいたようにフロリゲンの働きによるものです。葉でつくられるフロリゲンは、茎の頂端(茎頂)に移動して作用し、花芽をつくり出します。アサガオは短日植物ですから、日が短くなる(実際には夜が長くなる)とフロリゲンがつくられて働きます。 夜の長さのほかにも、栄養や水分などの環境もフロリゲンの働きに影響しています。例えば、小さい鉢に植えて乾き気味に育てると、花芽が付きやすくなります。また、雨降りの日に摘心すると花芽が付きにくいとされており、アサガオの愛好家は晴天の日を選んで摘心するそうです。
 次に、花芽が付いてしまうと、そのあとの生長が難しいかどうかですが、難しくはありません。子蔓の先が伸びて生長するはずです。アサガオは種子が付くと生長を止めるので、長いあいだ花を咲かせ続けたい場合には、咲いたあとの花を根元から摘んでしまうと良いでしょう。
 最後に、おなじように栽培したアサガオの、一方に花芽が、もう一方には腋芽ができた理由ですが、「個体差」も理由の一つです。ある品種をおなじように栽培しても、花芽と腋芽の付き方がおなじになるとは限りません。愛好家のグループでは、全体の姿と花の出来映えを競う品評会を開いていて、高評価が得られるような位置に花芽を付けるために、驚くほど細やかで厳密な栽培管理をしています。自分自身では試したことがありませんが、おなじように花芽を付ける方が難しそうです。また、葉に斑が入る品種では、斑の入り方が一定ではないので、フロリゲンのできる量に個体差がありそうです。以上のような管理の仕方や斑の入り方による個体差のほかにも、品種毎にも花芽の付きやすさは異なりますので、これも理由として考えられます。
 いずれにしても、納得できる回答を得るには、アサガオをたくさん育てて、いろいろ実験されるのが一番でしょう。鉢のサイズ、水やりの量を変えたりすることは簡単です。
なお、図鑑に答えはなさそうですが、アサガオの専門書(朝顔百科、朝顔百科編集委員会編、誠文堂新光社)が参考になります。


星野 敦(基礎生物学研究所)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2019-07-09