一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物における酢酸の乾燥耐性

質問者:   会社員   かんとく
登録番号4470   登録日:2019-07-10
お世話になります。
酢酸について質問させてください。

植物は乾燥(ストレス)を感じると体内で酢酸を生成し、自らを乾燥から守ることができるという記事を拝見しました。

質問なんですが、植物はクエン酸、リンゴ酸等いろいろ生成すと思うのですが、酢酸だけが乾燥耐性を持つのか、クエン酸やリンゴ酸等では乾燥耐性ができないのですか?
ただ、ストレスを感じ、乾燥耐性を作ることができても正常な生育からは外れ、生育が鈍くなったりするのではないかも心配です。

酢酸を生成することで乾燥耐性に強くなるのであればこれからの猛暑や干ばつに備え定期的に酢酸を与えればこれらに強くなり植物を正常に生育させることも可能かと思っています。
かんとく様

本質問コーナーをご利用下さりありがとうございます。
ご質問には植物の環境ストレス適応について研究されている関 原明先生(理化学研究所)から下記のような回答文を頂戴しましたので、ご参考になさって下さい。

【関先生からのご回答】
乾燥耐性の強化に関する我々の研究内容に関心を持って頂きどうもありがとうございます。
頂いたご質問に正確にお答えできていないかもしれませんが、以下に回答いたします。

植物の中では非常に多くの代謝物が作られます。その中で乾燥耐性付与効果を示すものは酢酸だけでなくプロリンなどのアミノ酸やガラクチノールなどの糖などいろいろあります。クエン酸やリンゴ酸が乾燥耐性付与を示すという報告は私の知っている範囲では論文としてこれまで報告されていないように思います。リンゴ酸に関しては気孔開口との関連を示唆する報告がありますので投与すると乾燥ストレスに対して逆に弱くなることも考えられますが効果の詳細はよくわかっていないように思います。酢酸に限らず他の化合物でもそうですが、ある条件で乾燥耐性を付与することができても過剰に投与すると植物の生育が阻害されたりすることは実際にありますので、植物ごとに有効な濃度、施用方法について検討しながら進めて行くことが大事だと思っています。酢酸による乾燥や高温耐性の強化に関しては、理研ベンチャー企業のアクプランタ株式会社( <http://ac-planta.com/> http://ac-planta.com/)が取り組んで
おられますのでご参考にされるといいかもしれません。


関 原明(理化学研究所環境資源科学研究センター植物ゲノム発現研究チーム)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2019-07-16
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