一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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あさがおの色水と染めた布の色の違い

質問者:   小学生   ゆい
登録番号4486   登録日:2019-07-23
 どうしてあさがおの色水とそめたガーゼの色が違うのでしょうか?
 また、布の素材によって染まる色が違うのでしょうか?
 
 色水は濃い紫でしたが、つけて取り出したガーゼはうすピンクでした。
 小学一年生の子供が夏休みの自由研究で調べたいと言っているのですが、いろいろ調べてもわかりませんでした。また、布の素材によかって染まる色が違うと聞いたので、後日子供といろいろな布や紙に染めてみようと思っています。
 小学1年でもわかるように教えていただけると助かります。
ゆい さん

しつもんコーナーへようこそ。かんげいいたします。
アサガオ(生物学で植物や動物の名前を書くときはカタカナを使いますが、ここではひらかなでも漢字でもいいでしょう。)の花の色はいろいろありますね。でも青〜むらさき色が多いでしょう。アサガオの花の色はどれも「アントシアニン」という色素(しきそ)によるものです。ご両親は健康に良いとせんでんされている「ポリフェノール」という物質のことを知っておられると思います。聞いてみてください。「アントシアニン」も「ポリフェノール」の一種です。せっかくアサガオの花の色についてじっけんをするのですからアサガの花のしきそのことをもう少し勉強してみましょう。アサガオの花の色素のことは、これまでにこの質問コーナーにたくさん質問がよせられて、答えといっしょに公開(こうかい)されていますので、ご両親といっしょに見てください。勉強になります。特に、登録番号0113, 0358, 0971, 1354, 2055 をごらんください。
その答えの中によく説明がされていると思いますが、ここでももう一度かんたんにくりかえしておきます。アサガオの花も他の生物の身体と同じように、けんび鏡を使わないと見えない非常に小さな「細胞(サイボウ)」(もう学校で習ったかな?)がたくさん集まってできています。細胞にはいろいろあって、「アントシアニン」は花びらの一番外側を作っている細胞にだけあります。内側の細胞にはありません。さらに、その細胞の中全体に色水としてとけているのではなく、一つ一つの細胞の中にある「えきほう(液胞)」という小さな袋の中にとじこめられています。花弁を手でもんだり、すりつぶして出てくる色素は、この液胞がつぶれて、中の色素が出てきたものです。
ところで、「アントシアニン」という色素はそれがとけている液体の性質によって色合いが違います。液体が酸性(さんせい)、つまりお酢(す)のように酸っぱいと赤色へと変わり、アルカリ性、つまり固形せっけん(液体の中性せんざいではない)や重曹(じゅうそう)のような物質(「えぐい」というか「いがらっぽい」というか、おいしくない味がしますが)の液体の中では青色に変わります。
さて、ゆいさんがアサガオの花からとった色水は紫色ということですね。紫色はもともと赤がかかっていますので、色水をうすめていくとピンクに近い色にもなるんじゃないかと思います。ゆいさんが紫色と言っている色や、ピンク色にそまったガーゼを見ていませんのでなんとも言えません。ガーゼがお酢のように酸性であるとは考えられませんし、よほど特別でないかかぎり白い布地につくと色が変わるということはないと思います。ガーゼは目のあらい布ですから、「アントシアニン」の色素がたくさん布地につかないのかもしれません。フランネル(お母さに聞いてください)などのように目のつんだ布地をそめてもやはりうすいピンクなのでしょうか。あるいは、厚手の和紙を染めててみてはどうでしょうか。「アントシアニン」は変わりやすい物質なので、ほっておくとどんどん色があせていきます。
アサガオもむらさき色の花ではなく、本当の青色の花を使ったらどうなるかもやってみてください。
むらさき色のアサガオの花が手に入ったら、私も試してみましょう。


勝見 允行(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-07-25