一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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菊の染まり方の実験について

質問者:   小学生   K
登録番号4516   登録日:2019-08-20
白い菊を「食紅」「プリンタのインク」「絵の具」の3種類(赤色)で染める実験をしました。1日浸けて様子を見ました。

食紅は、薄くですが花びらが染まりました。(がくは染まらない)
インクは花びらまで染まらずに、がくが真っ赤に染まりました。
絵の具は全く染まりませんでした。(原料にのりが使われているため維管束を通らなかったのではと予想出来ました)

食紅とインクの染まり方の違いに疑問を持ちました。
インクに比べて食紅の粒子の方が小さいから花びらまで色が届いて、インクは粒子が大きめだからがくで止まった、と考えたのですが、それならなぜ食紅は途中のがくを染めなかったのか。花びらへの道管と、がくへの道管は道が違うのでしょうか。
なぜこのような結果になったのか、調べても答えが出て来ません。
教えてもらえると嬉しいです。

ちなみに原料ですが、食紅は、赤色40号、プロピレングリコール 、パラオキシ安息香酸プロピルなど。
インクは、動物・植物から得た着色料、浸透材、乾燥防止剤、ph調整材、顔料などです。
Kさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
色素の与え方の記載がありませんので、おそらく花がついた茎(枝)の切り口を「色素溶液」に漬け、室内明所においたものと解釈しました。この方法では、枝の切り口から吸収された色素溶液が導管を通して葉、花に達することを期待していますが、溶液の移動は溶液の性質(pHや粘度など)に違いがなければ葉、花弁からの蒸散量に左右されます。蒸散量は、葉や花弁の気孔密度によって違いますから、着色の程度は気孔密度に依存します。気孔密度を測定した報告はいくつかありますが、その1つ、葉、萼片、花弁の上表皮、下表皮の気孔密度を双子葉類(合弁花13科,37種;離弁花16科、34種)、単子葉類(10科、19種)について測定した結果によれば、種によって大きく違いますが、大まかにまとめると、葉、萼片の気孔密度は高く(平方mm当たりの個数:葉下表皮、100~300個)花弁では極端に小さい(0~20個)となっています。これに基づいて考えると、花弁に流れる溶液量は極端に少ないことになります。
使われた食紅は水溶性ですから少しは花弁に達しているので薄く染まったとわかりますが、萼片はクロロフィルが多量にあるため、多少の赤色素があっても赤く染色されたとは分からないことが考えられます。葉も赤くは見えなかったと思います。これは、食紅の濃度によりますから、濃度を変えて調べればもう少し分かりやすい結果が得られるかも知れません。
問題はプリンターのインクです。インクの組成は色素だけではありません。指摘されているように多くの添加物が加わっています。また実際に使った食紅とインク色素の濃度やpH、粘度などは相互に比較できるように調節されていませんので、染色の程度も相互に比較できません。インクに含まれる色素以外の添加物が維管束の通導性(溶液の流れやすさ)にどのような影響をするか、全く分かっていませんが添加物の影響で用いた色素液の粘度は食紅と比べ高いことが考えられます。僅かな粘度の違いは細い花弁の導管の通導性に影響するはずです。これらの総合結果として、萼片には色素が蓄積したが、花弁には十分に達しなかったと推定出来ます。
茎、葉、萼片、花弁の維管束は、太さ、枝分かれ情況が大きく違うだけです。河川の本流、支流のようにつながったものです。

今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-08-27
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