一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根におけるオーキシン感受性について

質問者:   高校生   甘み
登録番号4531   登録日:2019-09-08
こんにちは。
生物の教科書に、「茎で成長促進される濃度のオーキシンは、根では成長抑制する」と書いてあります。実際、芽生えを水平に置くと、正の重力屈性が見られます。
では、根が地面と垂直にある時に、成長抑制されず根が伸びていくのはなぜですか?
甘み さん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
「茎で成長促進される濃度のオーキシンは、根では成長抑制する」との説明は、茎や根の切片に外からいろいろな濃度のオーキシンを与えた結果、茎の身長成長を促進する濃度のオーキシンでは、根の伸長を抑制した事実に基づいています。ご質問にある疑念は、「生育している植物の茎や根にあるオーキシンの濃度はみな同じ」と思ってしまうからでしょうか。実際は、そうではなく、軸に沿った極性移動という大きな流れ(これは主に維管束に沿っています)とこれから横方向(茎や根の中心付近から外側に向かう方向)への流れ(移動)、局所的(一点集中的)な移動などがあって組織の各部分のオーキシン濃度は動的に調節されています。ご質問の根ではどうかと言うことですが、上部から移動してきたオーキシンは根の先端、根冠細胞まで達すると横方向に移動して表皮付近を上昇し始めます。しかし、根冠細胞ではオーキシンの不活性化がおこるので、実際に上昇して根の伸長帯に達するときには根の伸長に適した濃度となっている、と考えられています。また、根を水平におくと根冠細胞が重力方向を感知して、下側により多くのオーキシンを移動させる(その結果下側のオーキシン濃度がより高くなる)ため伸長帯に達したときの濃度は根の伸長を抑制する範囲にあると解釈されています。また、オーキシンの生合成,局所的移動は茎先端だけでなく各器官、各組織でも環境変化、時間変化などに応じておこっています。根の伸長でも根で合成されたオーキシンが必要なことも分かっています。各部分における、オーキシン濃度調節の仕組みは生理条件、環境条件などで複雑に変化することも知っておいてください。
なお、このご質問に関連して登録番号2285はたいへん参考になりますし、「根とオーキシン」をキーワードとして検索するとたくさんの参考になる記事がwebサイトにありますので参考になさってください。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-09-16
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