一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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フランネルフラワーの毛について

質問者:   会社員   あとり
登録番号4545   登録日:2019-09-30
セリ科のフランネルフラワーについて質問です。
この花は全身が柔らかい毛で覆われていますが、この毛は何のために生えているのでしょうか?
オーストラリア原産と聞いていますが、オーストラリア原産の他の植物にも、毛で覆われているものが多いような印象があります。
オーストラリアの気候と関係しているのでしょうか?
どうぞよろしくお願い致します。
あとりさん

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
フランネルフラワーの毛は、表皮細胞の変形したもので、毛状突起、トライコームなどとも呼ばれます。多くの植物が毛状突起を持っており、その役割は植物によりさまざまで、系統的にも多様な植物が「毛」を持っています(後記参照)。その役割一つとしては、気孔から水分が蒸発するのを軽減する(CO2を吸収するには、気孔を開かなければならないのでこのとき水分が失われるが、毛状突起により気孔周辺の空気の流れが滞ることにより相対湿度の低下が緩和される(動物の毛は、空気の流れを妨げることにより、体から熱が逃げていくのを緩和している)、葉が強烈な太陽光にさらされるのを軽減する、などがあげられます。

日本では、白い毛の目立つ植物の中で、キク科のウスユキソウの仲間(例:ハハコグサの仲間)は亜高山帯の礫地に多くみられますが、「毛」の役割は上記のように考えられます。世界的には、ウスユキソウの仲間はヒマラヤを中心に分布し、西はアルプスから(エーデルワイス)、東は日本に分布します。毛状突起を持つ植物は、日本では比較的強い太陽光に、時には乾燥にさらされるところに生育するものが目立ちます。しかし、毛状突起を持つ植物は系統的にも多様で、その生育地は、こうした場所に限らず、低山帯から亜高山にかけて広く分布するものなどいろいろです。

ご質問の「オーストラリア原産の他の植物にも、毛で覆われているものが多いような印象があります」については、詳しいお答えはできかねますが、おそらく、生育地は日差しが強く、比較的乾燥した場所で、そのような場所ではこのような植物が目立つのではないでしょうか?せり科フランネルフラワーの分布に関しては、オーストラリアの東南部の盆地に自生するという記述がありました。

なお、植物の毛状突起の役割は多様で(例:虫害を防ぐ物質を分泌するなど)、その形態もさまざまです。「植物Q&A」で、「毛状突起」、「トライコーム」で検索するとたくさんの回答がありますが、たとえば、登録番号1090, 2383, 4110, 4116などは特に役立つでしょう。


櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-10-18
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