一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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アジサイの不思議!

質問者:   会社員   Dororo
登録番号4561   登録日:2019-10-18
これは本の読んで、それからズ~と疑問に思っていた事です。
それはアジサイの事です。

アジサイは酸性土壌ですと、花色が青色に変化します。
それは、土壌の酸度が強くなればなるほどアルミニウムが多くなり、そのアルミニウムをアジサイが吸収してます。
そしてアジサイの花の食物ホルモンのデルフィニジンと、そのアルミニウムが変化し、デルフィニジンが青色に変化するので花色も青色に変化すると読みました。

そして中性土壌になりますと、アルミニウムは少なくなり、アジサイが吸収できずらく、花の食物ホルモンのデルフィニジンの本来の色のピンクになると、これも読みました。これは中性土壌です。

しかし、もしアルカリ性土壌になりますと、アジサイの花色は赤になると聞きましたが、その訳は全く分かりません。
そこで質問です。アルカリ土壌では、本来はこのアジサイは、何色に変化しますか?またその化学反応の訳を詳細に教えて下さい。
Dororoさん

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。質問を歓迎します。
アントシアニンはフラボノイド化合物の1種で、化合物の基本骨格はアントシアニジンと呼ばれる化合物です。アントシアニジンには糖類などの化合物を結合できる水酸基が複数個あり、この水酸基に結合している化合物やその組み合わせも非常に多くて、報告されているものだけで約10,000種の化合物があるといわれています。遊離のアントシアニジンは細胞にとって有害なので、細胞質で糖などを結合すると有害でなくなり、その後液胞に蓄えられます。さらに、糖などを結合したものにAl3+などが結合し、そこにさらに助色素が結合することにより吸収スペクトルが変化し、アジサイの場合は青色になります。アジサイの青色については、みんなのひろば「植物Q&A」で、「アジサイ」を検索語として調べると既に多くの回答がなされています。たとえば、登録番号1340, 1334, 4074などが特に参考になると思います。

これまでは、アジサイの花が青くなるためには、Al3+が必要だというところまでは分かっていましたが、それ以上の説明は確定していなかったように思います。質問はこれらの回答の内容よりもさらに高度の回答を求めています。さて、最近、アジサイでは液胞中で、アントシアニン(詳しくはデルフィニジングルコシド)、Al3+、助色素としてネオクロロゲン酸の3者が非共有結合的に結合して錯体になることにより青色が生じるという報告が出ました。この説が正しいかどうか、今後検証され、確定していくことと思います。

質問の「アルカリ性土壌では赤くなる」に対する答えとしては、「アジサイが青くなるためにはAl3+を含む3者の共存が必要である。しかし、アルカリ性土壌の場合は土壌中のAl3+濃度が極めて低いので、アジサイはこれを十分には吸収できず、花も青色に発色することができない」となります。

余談になりますが、バラでは、日本のあるメーカーがパンジーのフラボノイド合成遺伝子を導入することにより“青いバラ”を作り出すことに成功しました。しかし、その色調は、パンジーのように鮮やかな青からはややずれています。この研究は花色改良のための第一段階は成功しましたが、望むような色の発現には、フラボノイド部分だけでなく、さらに助色団の細胞内合成、液胞中のpHなどの調節も必要だということを示しているように思われます。

以上


櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-11-02
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