一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物が温度を感じる仕組み

質問者:   会社員   fieldman
登録番号4565   登録日:2019-10-24
植物の成長に光と温度は重要なファクターだと思います。
植物が光を感じる仕組みは光受容体等である程度理解できました。
温度については、果実が成熟したり出葉に必要な積算温度や春化に必要な低温、脱春化に必要な高温などを調べることはできそうですが、温度を感じる仕組みについてはわからないので、教えて下さい。
fieldmanさん

みんなのひろば 植物Q&Aコーナーのご利用ありがとうございます。
同じような質問が登録番号2473, 0413にあり、これらが現段階でもお答えの主要なものです。その後、例えば、葉緑体の光定位反応に及ぼす温度効果の解析から、光定位反応の光受容体であるフォトトロピンが同時に温度センサーとなっていること、いくつかの転写因子やイオンチャンネル遺伝子が温度変化に応じて発現が変化する(温度変化を感じている)ことが示されるなど、温度変化を感知した後に変化する遺伝子発現などについての進展はありますが、温度受容体と思われるものの実体は分かっていません。その時、その時の温度は生体膜の流動性(膜構成脂質の温度による柔らかさ)の違いとなり、その違いが生理生化学反応に重要な影響をもたらしますから、生体膜が温度センサーとなっているとも言えます。しかしこれは一般的なことで、さまざまな温度効果の特異性を説明することはできません。近年、不思議な温度の感じ方がイワタバコ科の植物(例えばセントポーリア)で観察されています。神戸大学の研究者たちは、セントポーリアの葉に急激な温度低下処理を行うと葉は障害を受ける、この時温度低下の温度差が15度以上で障害が起こり、温度差15度以下では起こらない、という結果を報告しています。例えば30℃から20℃への低下では障害を受けないが、10℃に低下させる障害があらわれる。しかし、20℃から10℃へ低下させても障害は起こらない、ということです。このように低温、高温や温度変化がさまざまな生理的応答(遺伝子発現の変化を伴う)をすることが判っていて温度や温度変化を感知するセンサーの存在が推定されますがその実体解明にはまだ時間がかかりそうです。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-10-29
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