一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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葉の半分が紅葉するのはなんで?

質問者:   教員   なんで先生
登録番号4574   登録日:2019-11-03
 子どもに紅葉の話をしていた時,「葉の半分だけ紅葉したモミジを見た」と言われました。「なんで」と質問されて,「休みに見に行ってきます」と回答を延期しました。
 イチョウの葉が縁が黄色くなるのは見たことがありますが,モミジが縦半分紅葉するのを見ました。黄色に赤が半分あるというのはどうしてできるのでしょうか?
なんで先生 様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

光合成は光のエネルギーを用いて二酸化炭素を固定する反応ですが、秋になって気温が低下すると、二酸化炭素の固定活性が低下し、光が過剰になります。過剰な光エネルギーは活性酸素を生じ、クロロフィルの分解を促進します。また、クロロフィルの分解に先立ってアントシアニンの合成が起きることによって赤色を呈し、紅葉がおきます。アントシアニンの合成には光が必要だということがわかっています。アントシアニンの合成が起こらない葉では、クロロフィルが分解し緑色が消えたので、葉に存在していたカロチノイドの色が顕在化しで黄色になります。         
                                      
ご質問では普通は全体が赤色になるはずのモミジの葉の半分が赤色で、もう半分が黄色であるということですから、黄色の部分ではアントシアニンの合成が起きなかったということになります。その原因としては、大別して2つの可能性が考えられます。一つは葉の半分の形成に関わった原基細胞のアントシアニン合成に関する遺伝子の変異です。アントシアニンは細胞間を移動しませんので、このケースでは赤色と黄色の区画がはっきりしているでしょう。もう一つは、葉が置かれた環境の影響です。例えば、アントシアニンの合成には光が必要ですですが、ちょうど半分のところが影になっていればその部分ではアントシアニンの合成がおきないか、遅れますから黄色になるのではないかと思われます。この場合は境界が不明瞭になるだろうと思います。アルミで葉を覆うと赤色になりません(植物Q&A、登録番号3175)。アントシアニンの合成には、温度や水ストレスなど光以外の要因も影響しますので、他の生理的要因による可能性は排除できません。        
なお、本コーナーには、紅葉というキーワードで検索しますと多数の項目が出てまいります。登録番号0388, 3131, 3171など参考になる項目も多いと思いますので参考になさって下さい。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2019-11-06
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