一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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接ぎ木 失敗原因

質問者:   大学生   しゅり
登録番号4608   登録日:2020-01-06
接ぎ木についての質問です。
穂木を大豆 台木をタバコで接ぎ木をしたのですが,失敗してしまいます。
逆に穂木をタバコ 台木を大豆にしたところ成功したので、組み合わせは問題ないと思います。
ではなぜ、穂木を大豆 台木をタバコでの接ぎ木は失敗するのでしょうか。

タバコは生命力が強いので台木にした場合根からの栄養で十分生存できるから、大豆と活着しないというのは、考えられないでしょうか。

接ぎ木できない原因についてよろしければ教えていただけないでしょうか。
しゅり様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。回答は接ぎ木の研究をされておられる野田口先生にお願いいたしました。先生の回答をご覧になって下さい。

【野田口先生の回答】
同じ二種類の植物の組み合わせであっても、台木と穂木を入れ替えることで接木が成功したり失敗したりすることは起こりえます。
台木と穂木で、それぞれの接木部位における組織の反応は異なります。顕著な反応の一つとして、穂木側の傷口には植物ホルモンのオーキシンが蓄積し、それによって維管束近傍の細胞分裂が活発に起こりカルスを形成することが知られています。オーキシンは茎の中を根の先端に向かって運ばれますので、オーキシンの蓄積は穂木側の傷口では起こりますが、台木側の傷口では傷口が塞がるまでの接木の初期には起こりません。したがって、穂木側で認められるようなカルス形成は、台木側では起こりません。
穂木側の傷口では、この細胞分裂によって新生した細胞群が傷口を塞ぎ、それら細胞が組織に分化して台木と穂木の互いの組織をつなぎ合わせることで接木は成功します。
しゅりさんが観察された現象について考察しますと、タバコを穂木として接木した場合、タバコ側の傷口では接木が成功するのに十分な細胞分裂が起きたが、反対にダイズを穂木とした場合には、ダイズ側の傷口で細胞分裂が十分に起こらなかったことが可能性として考えられます。ホルモンへの応答性や細胞分裂活性は、植物の種類によっても組織の場所によっても異なりますので、このような違いは十分に起こりえます。
また接木の親和性は、細胞分裂活性だけで決まるわけではなく、細胞接着や接木部位がつながった後の成長バランスも影響すると考えられています。そのため、しゅりさんが観察された現象についても詳しく調べてみると他の原因が見つかってくる可能性があります。


野田口  理孝(名古屋大学大学院理学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2020-01-24
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