一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ドングリのタンニンと色素はどの部分に多い?

質問者:   教員   あんこ
登録番号4612   登録日:2020-01-10
近所でドングリを掃除して、捨てられる前のドングリを、草木染めに使おうと思い、拾って来ました。
草木染め用に、煮出した後のドングリを、再利用出来ないか考えております。もし、堅果や殻斗にタンニンが多いのであれば、煮出さず最初からクッキーなど作れる内側を取り除いて、食べてみたいと思いました。

ドングリによってタンニンの含有量も異なると思われますが、堅果、殻斗の外側と内側では、どちらにタンニンや色素は、多いのでしょうか。
ドングリの種類による差もお分かりであれば、教えて下さい。
宜しくお願い致します。
あんこ さん

みんなのひろば 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
ブナ科の果実をドングリと一般に呼んでいます。ただしクリノキもブナ科ですがが、どういう訳かクリ堅果はドングリとは呼んでいませんね。私たちの周辺にあるドングリと言えばシラカシ、アラカシ、アベマキ、クヌギ、コナラ、ミズナラなどの堅果が挙げられます。堅果では果皮が堅く乾燥し内部の種子の子葉にでん粉を主とする栄養分が蓄積されています。これらドングリの種子にはタンニンが含まれるものが多く、あく抜きをすれば食べられるようです。しかし、おなじブナ科のクリ、スダジイやツブラジイの種子は、タンニン含量が少ないのでそのまま生や加熱して食べられることはよく知られています。このようにドングリの種類によって含まれるタンニンの量の違いがあることは分かっています。ただ残念ながらお尋ねのように果皮と種子とを区別してタンニン量を測定したものではなく、ドングリ全体の値で種によってかなり大きな差があります。一例を挙げますと、スダジイ、マテバシイでは0.1~0.5%、イチイガシ、クヌギでは1.2~1.3%、アラカシ、シラカシ、コナラなどでは4.4~4.8%、ミズナラではもっとも多く6.7%といった状況です(乾燥粉末当たり)。つまり、食べられるスダジイ、ツブラジイなどのタンニン含量は低い値です。一方、果皮(鬼皮、渋皮)のタンニン含量を測定した報告は探索した限りクリの鬼皮(果皮)+渋皮(種皮)に限られていました。その結果を見ると、乾燥粉末において10%~12%のタンニン(没食子酸換算値)、しかし種子(子葉)は生でも食べられることからほとんどタンニンは含まれていないと推定されます。これらの結果から、ドングリの果皮にも数%程度のタンニンがあり、その値は子葉が可食かどうか(タンニンが多く含まれているかどうか)とは関係ないと推定して良いかも知れません。したがって、タンニン量の多いドングリでは果皮も種子もともにタンニンを含むと考えられますので、どちらがとのお答えは「ドングリの種類による」ことになります。
クリの果皮(鬼皮)のいわゆる「栗皮色」色素は水、アルコール、酸性アルコール、エーテル、石油エーテル、クロロフォルムなどで溶出しないので低分子の植物色素ではないと思われます。タンニン類が酸化重合した高分子(メラニン色素のような、植物ではフロバフェンと呼ばれています)と思われます。しかし、可溶性のタンニンも含まれますので草木染めなどには使われています。ご希望のようにドングリの果皮も種子も味わいのある色調を出すことは十分期待できますので是非ともチャレンジしてみて下さい。
ドングリのタンニン含量は http://www.in-ava.com/donguri.html を参考にしました。


今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-01-15
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