一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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植物における塩化ナトリウムの毒性や脱水症状への解決策

質問者:   高校生   エリザ
登録番号4618   登録日:2020-01-18
授業で植物に食塩水をかけると、ナトリウムの毒性、また植物の根は浸透圧で吸水するために脱水症状になってしまうことによって植物は枯れてしまうという学習をしました。

このナトリウムの毒性や脱水への耐性を強めるために、例えば植物内部のカリウムの濃度や塩分濃度を高めれば植物は枯れなくなるのではと思いました。

それをテーマに実験してみたいのですが、植物のカリウムの濃度や塩分濃度を人為的に高めることはできるのでしょうか?
エリザ様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
灌漑水が食塩を含んでいたり、灌漑管理が不十分だったりして、世界の灌漑地の約3割が土壌の高塩濃度の影響を受けています。灌漑による以外でも、海水の影響を受ける海岸部や塩類が集積し易い半乾燥地での塩害や、津波、高波による冠水や液状化に伴う高塩濃度の地下水の混入などの自然災害による塩害もあります。農業で塩害を軽減するために耐塩性植物の作成や栽培法の開発はとても大事ですね。
塩害の原因には大きく分けて、浸透圧ストレスとイオンストレスがあります。浸透圧ストレスによるものは、根の周囲の浸透圧が高くなることによって吸水が妨げられることや吸収されたナトリウムイオンが葉で濃縮されて葉の細胞の脱水を引き起こすことなどによります。また、イオンストレスによるものは、植物体内に入った過剰なナトリウムイオンが膜機能を攪乱したり、代謝を阻害したりして葉の枯死や生育阻害をもたらします。また、過剰なナトリウムイオンと他のイオンとのアンバランスによって生育阻害をもたらします。

前置きが長くなりましたが、植物体内のカリウム濃度を特別な方法で高める方法は知りません。しかし、植物にはカリウムを効率よく吸収するはたらきがあり、土壌にカリウムが存在するとあるだけ吸収してしまい、植物が必要とする以上のカリウムを吸収する過剰吸収がおきます。カリウムをたくさん与えることが、カリウムを多く含む植物をつくることになるのではないかと思います。ただし、土壌中に多すぎると他の窒素、リン酸、カルシウム、マグネシウム、ホウ酸、亜鉛など他のイオンの吸収を妨げて生育阻害を起こすことには留意する必要があります。
質問内容には、カリウムの他に塩分濃度を高めることも書かれていますが、どういう意図かよくわかりませんでした。もしかしたら、イオンストレスのことが考えから抜けているのかなと思いごく簡単にですが、前置きに記しました。                     
          
塩害の問題は重要な問題ですね。本コーナーにも今までに関連した多数の質問を頂いております。耐塩性とか塩障害をキーワードにして検索してみて下さい。また、ネットにも耐塩性、塩障害、植物、カリウム過剰などで検索すると最近の研究の動向なども知ることができると思います。


             
庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-02-01
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