うさくま様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。ダイコンやニンジンは小学校や中学校の理科の実験で、根の通道組織の配置を見る教材としてよく使われるようですね。
ご質問を読ませていただくと、根における通道組織の基本的構造を理解しておられるかどうかがはっきりしませんので、まずそのことから説明いたします。もしご存知だったら、スキップしてくださって結構です。
植物の通道組織の配置は、葉、茎、根によって、また単子葉植物、双子葉植物によって様々に異なりますが、ここではダイコン、ニンジンを念頭に双子葉植物の根について取り上げます。一般的なことは、例えば、「植物の根の構造」、「根の通道組織」、など関連する言葉でネット上で検索していただくと、たくさんの項目がありますので、それらを参考にしてください。あるいは高校生物の教科書でもいいでしょう。
双子葉植物の根は一番外側（土壌に接する面）は表皮、その内側に皮層という柔らかい組織があります。その内側、つまり根の中心部分は中心柱と一般に呼ばれている円筒形の構造があります。中心柱は内皮で囲まれその内側に内鞘があります。そして内鞘の内側には師部（光合成産物などの栄養分を運輸する師管と柔組織などが含まれる）、ついで形成層（分裂組織）、そして中心柱の芯に木部（根から吸い上げる水やそれに溶けている、ミネラルを運輸する道管と柔組織などが含まれる）という順に構成されています。師部と形成層と木部の部分をまとめて「維管束」と言います。このような構造は植物が胚の時から芽生えの形成とともに分化してきたもので、これらを初生あるいは一次組織と呼び、たいていの草本植物は死ぬまでこの構造を維持します。しかし、樹木のような木本植物や、ダイコン、カブ、サトウダイコンなどのように太くなるものもあります。このように太くなる成長を二次成長（肥大成長）と言います。特にダイコンのような根菜は養分を蓄える貯蔵組織となっています。
さて、肥大成長は一次師部と一次木部の間にできた形成層（維管束形成層）がリング状につながって、盛んに分裂を始めることでおきます。それによって一次皮層は表皮とともに剥がれてしまいます。維管束形成層の活動の結果、二次維管束組織が新たに形成されてきます。コルク形成層という新しい組織も分化してこれから、表面を保護する働きをする「周皮」が作られます。このような二次成長の結果、周皮の内側には二次維管束組織がリング状に形成され、したがって道管もそのように配置されます。根の中心部の道管はそのまま残ります。簡単に言ってしまうと、ダイコンでは二次維管束形成層の働きで内側に木部外側に師部ができるのですが、木部の大部分は柔細胞で、それによって肥大が起きています。また、中心柱の内鞘からは側根が分化して伸びてきますので、その中には道管もあります。道管は水の通路ですから、インクを混ぜた水を根の切り口から吸わせれば、インクは水の通路、つまり道管の所在を示すことになります。なお師管や形成層は水の通路ではないので染まりません。　　
ニンジンは少し異なります。本コーナーでも先に関連・回答が掲載されていますので、それを読んでください（登録番号3953）。ニンジンはダイコンと違って、木部ではなく師部の柔細胞が増えて肥大したものです。残念ながらダイコンもニンジンも維管束組織を示す写真がありませんので、図示することはできませんが、ネットを検索なさるとお求めになっているような写真がたくさん掲載されていますので、それをご参照ください。