一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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自然交配菜について

質問者:   その他   ちょじ
登録番号4627   登録日:2020-01-25
2004年から小さな家庭菜園をやっています。
毎年、秋に菜っ葉類の種まきをしていますが、これらが成長して収穫しますが
種採りように一部は残して花を咲かせて種を採るものあるし、採らずにそのまま残して次回の
作付けまで畑の放置しておきますがそれらが花を咲かせている間、多くの昆虫、蜂類が花粉をとびちらして交配を進めます。
以下のアドレスをご覧ください。

http://koia.web.fc2.com/kara/shizenkouhai.html

そうした中、一部の自然交配菜は、まるで固定種になったかのように毎年同じ形で出現するものが多くありますが、一部はこれまで見たこともないような形に変化して出現するものもあります。
ネットで検索してみるとどこの畑でも同じような自然交配の菜っ葉類が出現しているようですが、
一部はその時点で固定種として認定されているものあるようですが、私が不思議に思うのは
こうして認定された菜っ葉たちは果たして未来永劫にそのままの形で引き継がれていくもののなのかということです、代を重ねて行くうちにはいつの日か先祖帰りをしてまったく別の形に戻ることはないのでしょうか。
ちょじ様

質問コーナーへようこそ。歓迎いたします。私からの回答依頼の手続きがうまくいっていなかったようで、回答が大変遅くなってしまい申し訳ありません。
回答は農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門の小原隆由先生にしていただきました。

【小原先生の回答】
ご質問頂きありがとうございます。
ご質問者が作成されたWebページを見させて頂きましたが、自然の交配で得られた新しい菜類を長期にわたり大変良く観察されており、非常に興味深く拝見しました。

既にネットでお調べになってご存じのように、アブラナ科野菜のうち、カブ、ハクサイ、コマツナ、キョウナ(ミズナ)、ナバナ(和種ナタネ)等は、葉や根の形は大きく異なっていますが、学名「Brassica rapa(ブラシカ・ラパ)」に属する全く同一の種です。
これらは自分自身の花粉では実を結びにくい性質(自家不和合性といいます)を持っているため、ミツバチなどの訪花昆虫によって別の株から花粉が運ばれて結実します。従って、自然環境下で採種を行っていると、数キロ離れた別の畑で咲いている別のカブやハクサイからでも花粉が運ばれ、葉や根が多様な特徴を示す雑種種子になってしまいます。なお、ダイコン(ダイコン属)やわさび菜(カラシナ)はブラシカ・ラパとは別の種ですので、自然交配する確率は低いため、ご質問者の畑でできた雑種野菜の大部分はラパ類だと思います。
葉や根の形から、元の親を想像してみるのも楽しいですね。
また、雑種は一般に固定種よりも旺盛な生育を示す場合が多いため(雑種強勢)、ご質問者の畑の雑種野菜が大きく成長する場合があるのもうなずけます。また、別のF1品種などが持っていた「病気に強い性質」を受け継いだ雑種もあるかも知れません。

さて、前置きが長くなりましたが、ご質問の「固定種」についてです。
伝統野菜や地域特産野菜など、アブラナ科の固定種の採種をする場合は、その品種だけを隔離した環境で交配させて種子を得ています。
固定種であっても、近くに他のブラシカ・ラパが咲いていれば簡単に交配し、雑種種子が混ざってしまいます。このため、訪花昆虫が行き来できないほど遠い隔離畑で栽培したり、あるいはネットをかけたハウス内でミツバチを放すなどして採種を行う必要があります。ご推測のように、世代を重ねていくうちに、親が持っていた隠れた特徴が現れてきたり、別の花粉が混ざってしまい異株が混入したりする場合があります。そこで、毎回花を咲かせる前に、目的の特徴を持つ株だけを選んだり、あるいは異株を抜き取る等の手間をかけて、元の固定種の特性を維持しているのです。


小原 隆由(農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門)
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2020-03-16
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