一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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細胞の形の違い

質問者:   高校生   やなせ
登録番号4629   登録日:2020-01-26
生物の授業を受けている時に、細胞の説明がありました。
そこで、動物細胞は丸い形(球形)をしていて、植物細胞は四角い形をしているということを話されました。
その時私は「なぜ細胞の形が球形と四角形とで、形に違いがあるのか?」と思い、ネットや図書館で調べてみました。
しかし、その結果だけしか書いておらず、その形になるまでの経緯は見つかりませんでした。

そこで、「細胞の形が動物、植物間でそれぞれ球形と四角形と形が異なるのはなぜか」を教えてください。
よろしくお願いします。
やなせ様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

どの教科書でも、動物細胞と植物細胞の構造を比較した模式図で、動物細胞は球形(丸みを帯びた形)に、植物細胞は四角い(角ばった)形に描かれています。授業での説明はその模式図の説明ではないかと思いました。

動物細胞と植物細胞の構造の違いについては既に学ばれたのではないかと思いますが、その違いのひとつに細胞の最外層の構造があります。動物細胞では、細胞質の最外層は脂質やたんぱく質を主な構成成分とする細胞膜であるのに対して、植物の細胞では細胞膜の外側に、さらにセルロース、ヘミセルロース、ペクチンなどの多糖(糖がたくさん連なっている物質)からできている細胞壁という硬い構造があります。

動物細胞を水に漬けると水を吸って膨らみ、最終的には細胞膜が破れ、細胞が壊れてしまいます。細胞が形を維持するためには、細胞膜が壊れないような環境に細胞が置かれていることが大事です。植物細胞ではそれに対して水を吸うと細胞は膨らみますが、ある程度膨らむと硬い細胞壁が水の吸収をおさえ、破裂することはありません。細胞壁を酵素処理などで取り除くと動物細胞のように吸水が続いて破裂してしまいます。植物細胞では細胞壁が細胞の形を決めていることがわかります。細胞が丸いか、角ばっているかということには、細胞の形を決めているのが柔らかい細胞膜か、硬い細胞壁かということが関わっていると思われます。

それに加えてもう一つの重要な要因としては、細胞分裂の仕方の違いがあります、動物細胞では、ゴム風船の真ん中を糸でくくると2つの小さい球形になるように、細胞の真ん中がくびれて2つの丸い細胞に分かれます。それに対して植物の細胞は真ん中に細胞壁と細胞膜による仕切りができて2つの細胞に分かれます。仕切りは細胞の側方の細胞壁に繋がりますので、細胞は角ばることになります。

注意しなければいけないのは、教科書の模式図は分化(特定の構造や機能)が進んでいない細胞を基にしているということです。分化の進んだ細胞、例えば動物の神経細胞は長い突起をもっており、丸くはありません。筋肉の細胞は細長い形をしています。植物の細胞でも、葉の海綿状組織の細胞は角ばっているようには見えません。気孔の孔辺細胞は楕円形をしています。動物細胞と植物細胞の全体を円形か角ばっているかということで区別することはできないと思います。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-02-12
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