一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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種子のデンプン貯蔵について

質問者:   高校生   みく
登録番号4637   登録日:2020-02-03
私は高校で生物を学習しています。
ある問題集に、「イネや小麦などの穀物の種子は胚乳にデンプンを貯蔵するが、ブドウ糖やショ糖ではなくデンプンで貯蔵する利点を説明せよ。」という問題がありました。
答えには、「デンプンは水溶性が低く、貯蔵時に種子の浸透圧が上がりにくい。また休眠中の乾燥にも耐えられる。」とあったのですが、どうして休眠中の乾燥に耐えられるのでしょうか。
インターネットで調べてもよく分からず、質問致しました。よろしくお願いします。
みく様

 植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。
私の不手際で回答が遅くなり申し訳ありません。回答は種子形成の研究をされておられる服部束穂先生にお願い致しました。

【服部先生の回答】
 穀物種子の胚乳はその最外層の糊粉層(アリューロン層)という場所を除いては、種子が形成され乾燥していく過程でその細胞は死んでゆきます。したがってお訊ねの問題の答え「休眠中の乾燥にも耐えられる」と言っているのはデンプンなどの貯蔵する糖そのものの状態のことを指していると考えられます。休眠中の種子が降雨や水没したときのことを想像すると、可溶性の糖の場合、死んだ細胞からは溶け出してしまうかもしれませんね。さらに重要な点は、不溶性であるデンプンは細菌やカビによって分解されにくいことです。麹菌などのように不溶性のデンプンを分解して糖として利用できる微生物は限られています。問題の答えは間違ってはいないと思いますが、的確さという点ではすこし難があるかもしれませんね。「浸透圧が上がりにくい」という部分も、これは濃度勾配に逆らって物質(糖)を胚乳にため込む上で有利であるということだと思われます。



服部 束穂(名古屋大学大学院生命農学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
庄野 邦彦
回答日:2020-03-02
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