一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アオコの発生について教えてください

質問者:   高校生   さと
登録番号4648   登録日:2020-02-18
僕は水耕栽培に興味があり、家で簡単な水耕栽培の装置を作りレタスを栽培しています。養液に浸したスポンジに種をまくのですが、しばらくするとスポンジが緑色になってきます。調べてみるとアオコが発生しているようです。なぜこのアオコは発生するのでしょうか。空気中を漂っているのでしょうか。また、アオコの発生をなくしたり、抑えることはできるのでしょうか。よろしくお願いします。
さとさん

みんなのひろば「植物Q&A」へようこそ。
質問を歓迎します。

陸上植物の栽培には、光、水、無機栄養塩類、空気(特に二酸化炭素)が必要ですが、土壌は必ずしも必要でないので、水耕栽培によって作物を生産することができます。このような培養条件は陸上植物だけでなく、藻類の生育にも適しています。藻類は栄養塩類を吸収するので、植物と競合します。また、藻類の分泌物や遺骸は細菌やカビの栄養源となり、植物に害を与える可能性もあります。そこで、水耕栽培においては、時として、如何にして藻類の生育を抑制するかが課題となります。質問では「アオコ」が生えると書いてありますが、緑色の微生物には、シアノバクテリア(別名:ラン藻、アオコはその中の一群)だけでなく、緑藻類、ユーグレナなど色々あります。

藻類などの光合成微生物の生育を抑制するには、第一に水耕培養系に藻類を持ち込まないことです。土壌には藻類がいますので、発芽は土に触れないように、「さとくん」がしているように、スポンジなどを用いることはいいことです。水は池や河川の水を避け、汲み置いた水道水などを用いるといいでしょう。藻類は生育に光を必要としますから、水耕液に光が当たりすぎないように管理することも有効です。農業の黒色プラスチックフィルムとして、いわゆる「マルチシート」と呼ばれているものなどが市販されているので、水槽の周りをできるだけ遮光し、作物の地上部用には市販されている穴あきのものを利用することも考えられます。

さて、いろいろな注意をしても、通常の栽培環境で水耕液に藻類が混入してくることは避けられないとも言えます。「さとくん」が考えたように、空気中から混入した可能性も大いに考えられます。実際、空気中の浮遊物を微細フィルターで集め、そのDNAを分析したところ、多くの細菌のほかに、多数の緑藻、シアノバクテリアの株が見つかったという外国の報告があるということを、国立環境研究所の専門家、河地正伸室長(理学博士)および中嶋信美室長(農学博士)から教えていただきました。日本でも、同様なことでしょう。

無菌的実験施設ならともかく、通常の水耕施設では光合成微生物の混入を完全に避けることは困難なので、あまり神経質にならずに、藻類が多少混入しても実害のない程度に管理することが実際的目標となるでしょう。


櫻井 英博(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-02-29
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