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キセニアとメンデル遺伝の違い

質問者:   中学生   agriculture
登録番号4653   登録日:2020-02-22
キセニアとメンデル遺伝の違いを、わかりやすく説明していただけませんか?キセニアが3:1になる理由はわかりますし、メンデル遺伝の原理も理解しています。
ただ、メンデル遺伝との違いが、いまいちよくわからず、3nと4nが違うだけでは無いと思います。
よろしくお願いします
agricultureさん

みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。
キセニアとはどういう形質発現形式かと言うこと、重複受精の結果として形成される次世代(胚)と胚乳との区別をはっきりと理解することが必要です。
まず被子植物の受精をごく単純化してみます。雌しべの下部に子房と言う膨らんだ部分がありますが、その子房内に作られる胚嚢(のう)母細胞(2n)と言う細胞が減数分裂をして4個の細胞(n)が出来ます。そのうち3個は退化して1細胞だけが胚のう細胞(n)となります。胚のうは細胞質分裂をともなわない核分裂を3回繰り返して8核の細胞となってから細胞質分裂をして6個の1核細胞と1個の2核細胞が出来ます。
1核細胞のうち1個だけが卵細胞へと発達し、2個は卵細胞の近くに移動して卵細胞の受精を助ける助細胞へ、残りの3細胞は卵細胞の反対端に移動し、反足細胞となります(助細胞、反足細胞の働きについては登録番号2771を参考にして下さい)。2核細胞は胚のうの中央に位置することになります。
一方、花粉(花粉母細胞が減数分裂をして出来ます。そのため核相はnです)はさらに細胞分裂を1回して2細胞となり、その1つは雄源細胞(後に精細胞-精子-となる)、他は栄養細胞となります。柱頭についたあと発芽して花粉管の中で雄源細胞は2個の精細胞(精子)となります。花粉管は助細胞に導かれて胚のうに接近し、花粉管を破って2個の精子を胚のう内に放出し、1つは卵細胞の核と融合して胚へ、他の1つは中央細胞内の2核(極核)と融合して胚乳へと発達します。同時に2つの違った受精が行われるので重複受精と言われます。
キセニア現象とは、花粉の精子核が極核と融合した結果、精子核の遺伝子の形質が優勢で胚乳に(種子で)発現する現象を言います。このとき、発現する形質はメンデル遺伝で示されている優勢、劣勢の法則が現れます。卵子側は無色、精子側には有色の形質があった場合、通常有色形質は無色形質に対して優勢形質ですから胚乳(種子)は有色になる現象です。同じことは、イネのモチ性とウルチ性にも現れます。ウルチ性はモチ性に対して優勢です。したがって、モチ性のイネの近くにウルチ性イネが栽培されていた場合、ウルチ性の花粉がモチ性イネへ受粉されると、本来モチ性の米がウルチ性の米になってしまうこともキセニア現象です。イネは自家受粉性ですから、全部の種子がウルチ性になることはありませんが、モチ米の中にウルチ米が混在することになり、モチ米としての品質が大きく落ちるので好ましいことではありません。遺伝子の分離、発現においてメンデル遺伝と違うところ、矛盾するところは全くありません。キセニアはメンデル遺伝の拡張版と考えて差し支えないと思います。
トウモロコシは1つの穂にたくさんの雌花がつく構造(穂軸性)をもっています。受粉のとき近辺に優勢形質(例えば有色性)をもつ個体があってその花粉(有色性の遺伝子を含んでいる)を受粉すると、有色遺伝子と受精した種子は有色に、そうでない種子は無色(白色)になります。この現象を利用し、白色種子(白色胚乳)のトウモロコシ近辺に、赤、紫、黄など違った色素遺伝子をもつトウモロコシを配置して、1本の穂軸に本来白色種子だでのとモロコシが赤、紫、黄などの種子が混在して面白いトウモロコシができあがることになり、実際これらは装飾用トウモロコシとして作られています。園芸的にキセニア現象を利用される例です。
因みに、マメ類のように胚乳が発達しないで、子葉(胚の一部、メンデル遺伝に支配される)に栄養が蓄積されるような植物ではキセニア現象は起こりません。
長い解説になってしまいましたが、メンデル遺伝というと主に次世代の形質発現に関するもので、キセニア現象は次世代の形質でなく、母体一部の形質発現に関する現象です。形質発現における遺伝因子(遺伝子)の優劣関係、発現機構などはメンデル遺伝と同じことです。

「キセニアが3:1になる理由はわかります」:キセニア現象が分離すると言うことはありません。



今関 英雅(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-02-24
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