一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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発芽と温度差の関係

質問者:   自営業   ミント
登録番号4654   登録日:2020-02-23
主に野菜についてですが、加温して発芽をさせる時に、発芽適温内で昼と夜の温度差を与えると発芽率が良くなると聞きました。
調べると発芽試験の際、夜20℃~昼30℃と設定する種類もあるようでした。

発芽適温内で恒温にしても同じ結果になる気がしますが、なぜ温度差があるとより発芽が良くなるのでしょうか?

温度差が発芽を促す理由を知りたいです。

よろしくお願いします。
ミント様

植物Q&Aのコーナーを利用下さりありがとうございます。

1883年にEidamが、イネ科の牧草が夜と昼の温度差(変温といいます)のある状態でよく発芽すると記載しましたが、その後イネ科以外の植物でも、野生植物か栽培種であるかに関わらず、また、草本植物でも木本植物でも、多くの植物で変温によって発芽促進がみられることがわかってきました。現在でも植物が生育していた環境との関係など生態学的研究が活発に行われています。変温処理は、農業分野や園芸分野で発芽促進や発芽時期の均一化などで広く利用されています。

ところで、変温が発芽を促進する原因ですが、いろいろな説があります。例えば、変温によって種皮が伸縮し、吸水を促進するという説があります。種子の濃硫酸処理や種皮の機械的破壊が、発芽に変温を必要にしていた種子の恒温での発芽を可能にするという事例は、その説を支持するものです。一方、セロリなどの種子では、種皮を除いても変温要求性に変化がありません。この場合は変温の影響は胚自体に及んでいることになります。一般的には、休眠あるいは発芽遅滞の原因が胚自体にある種子で変温による発芽促進が見られることが多いようですが、その生理学的、生化学的機構についてはあまりわかっていません。

変温が植物の発芽促進に働く多くの例が知られていますが、一般的にどの機作が主として働くのかは明らかではありません。植物によって変温に対する種子の応答がさまざまで、それは各植物間で胚の休眠の深さの違い、温度に対する生長速度の違い、生化学的な反応の違い、種皮の硬さなど構造的な違いなどがあり、植物によってどの要因が変温に対する応答で主として働くのかが違うためではないかと思われます。なお、イネのように恒温で高い発芽率を示す種子では、変温によって発芽率が低下することがあります。


庄野 邦彦(JSPPサイエンスアドバイザー)
回答日:2020-03-05
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